RSSはもう死んだものだと思っていた。
でも、そうではなかった。
海外の主要ニュースサイトから見出しを集めて、CLIでニューストピックを表示するアプリケーションを作ろうとしたことがきっかけだった。AIによる成果物を動かしてみて、裏側ではスクレイピングをしているのだろうと思っていた。ところが、実際にはRSSフィードから更新情報を取っていた。
つまり、RSSは死んでいなかった。
死んでいたように見えたのは、RSSそのものではなく、普通の人がRSSを意識して使う入口だったのだと思う。
Google Readerが終わっただけだった
RSSが終わったように感じられた象徴的な出来事は、Google Readerの終了だった。
Googleは2013年3月13日の公式ブログ記事「A second spring of cleaning 」で、Google Readerを2013年7月1日に終了すると案内している。公式ブログでは、熱心なユーザーはいたものの、利用が減少していたことが理由として説明されていた。
Google Readerを使っていたわけではないが、そんな私でも記憶しているほど当時は驚きのニュースだった。
RSSを読むための代表的なツールの一つが終了となったことで、一般ユーザーの視界からRSSは急速に消えていったように見える。その後はSNSのタイムライン、ニュースアプリ、レコメンド、今ならAIによる要約やおすすめが、情報を受け取る入口になった。
だから、Google Readerが終わったことと、RSSという仕組みが終わったことは別の話である。
きっかけは海外ニュースをCLIで眺めるツールだった
今回作ろうとしたのは、海外ニュースの見出しをCLIでざっと確認するための小さなツールだった。
リポジトリはこちら。
aragig/shell-toolbox の news-topics
実行すると、複数の海外ニュースサイトから見出しを集めて、ターミナルに一覧表示してくれる。
以下は news コマンドを実行した出力イメージだ。
BBC / Reuters / NPR / DW / France 24 / Al Jazeera など、複数のニュースサイトから取得する。ソースごとの上限とラウンドロビンでひとつのサイトに偏らないように表示している。
私は英語がすらすら読めるわけではない。だから見出しは自動翻訳されるようにした。本文まで全部読む必要はなく、まずは見出しだけでよい。気になった記事だけ開き、ブラウザの翻訳機能で読む。
10件くらい眺めるだけでも、とりあえず世界で何が起こっているのかをざっと見られる。
ここで面白かったのは、「海外ニュースの見出しを集める」という一見スクレイピングっぽい処理が、実はRSSでかなり素直に実現できたことだった。
自分で情報源を選びたい
日本のニュースアプリや大手ポータルのトピックだけを見ていると、自分にとって興味のない芸能ニュースが多かったり、似たような切り口の話題ばかりに感じたりすることがある。
SNSも便利だが、タイムラインは他人の関心や怒りに引っ張られやすい。レコメンドは便利だが、なぜそれが出てきたのか分かりにくい。
自分がやりたかったのは、大手がまとめてくれるトピックをただ受け取ることではなかった。
自分である程度情報源を選び、気に入ったニュースサイトやブログの更新を確認したかった。
RSSはこの目的にかなり合っている。
- 自分で情報源を選べる
- 各メディアの偏りをならせる
- 見出しだけを機械翻訳できる
- 気になったものだけ読める
情報を全部読む必要はない。まずは見出しを見て、読むかどうかを自分で決める。その入口として、RSSはとても素直だった。
AIがあるとRSSはニュース・ミキサーになる
昔のRSSリーダーは、登録したフィードを読むためのアプリという印象が強かった。
でも今は少し違う。
CodexのようなAIコーディングエージェントにお願いすれば、RSSを取得して、ソースごとの偏りをならし、見出しを翻訳し、CLIで読みやすく表示するところまで一気に作れてしまう。
RSSリーダーというより、自分専用のニュース・ミキサーに近い。
RSSは情報源の入口を提供する。AIは、その情報を翻訳したり、整形したり、要約したり、分類したりできる。役割が分かれているので相性がいい。
AIによるおすすめを丸ごと受け取るのではなく、自分で選んだ情報源をAIに処理させる。ここが大事だと思う。
このHugoサイトにもXMLが出ている
このサイトもHugoで作っているので、RSSのようなXMLが出力されている。
普段ブラウザで記事を読んでいると意識しないが、静的サイトでも更新情報を機械が読み取れる形で出している。
ブログもニュースサイトも、読者が直接XMLを見ることは少ない。それでも、裏側ではこうした配信フォーマットが残っている。
ポッドキャストでもRSSは現役で使われている
RSSはニュースやブログだけのものでもない。
RSS 2.0の仕様 は、Webコンテンツを配信するためのXMLベースのフォーマットとして公開されている。そしてポッドキャスト配信でもRSSは今も重要な役割を持っている。
たとえばApple Podcastsは、公式ヘルプの「RSS feed refresh 」で、RSSフィードを確認して新しいエピソードやメタデータ、アートワークの変更を検出すると説明している。
つまりRSSは、表に出て目立つ存在ではなくなっただけで、ニュースサイト、ブログ、ポッドキャスト配信などでは今も普通に使われている。少なくとも「RSSは廃止された」と考えるのは、かなり雑な理解だった。
RSSはAI時代にちょうどいい
RSSは死んだのではない。
便利なアプリ、SNS、レコメンドの奥に押し込められて、普通の人の目に触れにくくなっただけだと思う。
けれど、情報が多すぎる今だからこそ、自分で情報源を選び、自分で読む順番を決める仕組みには価値がある。
しかも今は、英語の見出しを自動翻訳できる。CLIアプリくらいなら、Codexに頼めばすぐに作れる。ブラウザ翻訳も昔よりずっと自然になった。
そう考えるとRSSは、過去の遺物というより、AI時代にちょうどいい素朴な情報取得インターフェースなのかもしれない。機械が読みやすい入口を自分で選び、その先の翻訳や整理をAIに任せる。情報過多の時代には、このくらい単純な仕組みのほうが扱いやすい。
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