【エフェクター製作】リバースDI(リアンプ)をつくってみよう

はじめに この記事では、ライン出力をエフェクターに通しやすいギター信号へ戻すためのリバースDI、いわゆるリアンプを自作した記録をまとめます。ポイントは、ST-14トランスを単純に逆向きで使うだけでは出力が大きくなりすぎるため、入力側にT型アッテネータを入れて信号レベルを落とすところです。 ダイレクトボックス(DI)の役割が、ハイインピーダンスをローインピーダンスに変換することであれば、この記事で紹介するリバースDIは、ローインピーダンスをハイインピーダンスに変換するものです。逆ダイレクトボックスと言ったところです。 「そんなの何に使うの?」と言われると、多重録音などに使えます。リバースDIにライン信号を通せば、ギターのようなひ弱な信号へ変換され、キレイにエフェクターがかかるという訳です。 マイク・オールドフィールドのような多重録音マニアな方、つくってみませんか? https://www.youtube.com/watch?v=bv_4sZCLlr0 リバースDIの使いみち 冒頭に説明したとおり、リバースDIはライン出力などのローインピーダンスをハイインピーダンスな信号へ変換するために使われます。ライン出力をそのままエフェクターにつないでも、ギター信号とは違いキレイ効果が得られません。そんな時にリバースDIを使ってみましょう。 次の図のようにライン出力後に、今回制作するリバースDIの「Re:AMP」をつなぎます。 ただし、お値段がアレなので自作するのも良いでしょう。 リバースDI「Re:AMP」の回路図 こちらが今回制作したリバースDI「Re:AMP」の回路図になります。 1kΩ:500kΩのトランスは、山水のST-14が使えます。 出力信号が大きすぎる 最初は、パッシブDIの入力と出力を単純に逆にすれば、リバースDIの完成だと思いました。しかし、実際やってみると都合の悪いことが起きます。 インピーダンスの変換はできても、出力の信号レベルが大きすぎてしまうのです。 ST-14は、1kΩ:500kΩで、つまり巻数比は1:22.4になります。ですから、入力した信号は22倍もの大きさになって出力されます。 実際に測定してみたたところ、1Vppの信号が15Vppほどの大きさになってしまいました。 15Vppと言えば、30Vもの振れ幅になります。通常のエフェクタ電圧である9Vを、ゆうに超えてしまいます。 これでは、エフェクターがキレイにかかるどころではないですよね。 出力にアッテネータをつける 「出力を下げるためには、トランスの出力側にボリュームをつければ良い?」 ところが、それだとダメです。なぜなら、出力インピーダンスが変わってしまうからです。出力側のインピーダンスは、ピックアップのような固定ハイインピーダンスにしたいのです。ここでは500kΩですね。 入力にアッテネータをつける そこで、入力側にアッテネータをつけて、ライン信号を減衰させることにしました。アッテネータは、T型アッテネータを使いました。T型アッテネータは、インピーダンスを変えずに音量を減衰できる特徴があります。 どの程度の減衰になればよいかは、次のように考えました。 まず、この「Re:AMP」は、ハンディレコーダーやiPhoneなどの民生機のライン出力を想定してます。民生機のライン出力は、大きくても1Vpp以内です。また、強く弾いたギターの生音は、500mVpp以上出ます。ですから、ライン信号の振幅がそのまま出力に出てくれればよいのです。トランスによる増幅は必要ありません。 これらを元に、T型アッテネータのインピーダンスを1kΩに設定し、減衰量を-19dB(約1/9)としました。回路図の800Ωと220Ωの抵抗がT型アッテネータになります。800Ωの抵抗は、330Ωと470Ωを直列にして使いました。 モジュラーエフェクタ化 回路を元に、基板をつくって「Re:AMP」をつくってみました。写真のように、モジュール化しました。 回路図には書いてませんが、スルースイッチを設けて原音と切り替えられるようにしました。 ギターの生音をレコーダで録音し、ライン出力ちょくの信号と「Re:AMP」を通した信号とで、エフェクターのかかり具合を比較してみました。とくに歪み系エフェクターだと違いがはっきりしました。ライン出力を直接エフェクターにつなぐと、音色が暗く、少し重たい印象になり不自然でした。しかし、「Re:AMP」を通すと臨場感やリアル感がでて、エフェクターの効果が自然になりました。 関連記事 パッシブDI ST-14 自作エフェクター製作まとめ NPNシリコントランジスタで作るFuzz Face 関連アイテム ST-14 トランス エフェクター ケース

公開: 2021年3月11日 · 更新: 2026年5月6日 · Toshihiko Arai
オペアンプ1石で作るオーバードライブ【自作エフェクタ製作】

オペアンプ1石で作るオーバードライブ【自作エフェクタ製作】

この記事では、オペアンプ1石で作れる自作オーバードライブ回路 「Overdrive One」をご紹介します。 この回路の特徴は、部品点数が少なく、設計どおりに増幅率を決めやすく、オペアンプ式らしく失敗しにくいことです。音の印象としては、小さな歪みのクランチから派手な歪みまでカバーしやすく、つまみの効き方も素直 でした。 また、ゲインを絞ればブースター寄りにも使えますし、逆に深く歪ませればかなり攻撃的な音にもできます。低音の出方は回路中のコンデンサ容量で調整しやすく、この点も自作向きです。 3行でわかる特徴 オペアンプ1石で作れるシンプルなオーバードライブ回路 クランチから派手な歪みまで、1ノブで扱いやすい 実用寄りの通常モードに加え、遊び要素の強い Scream スイッチも搭載 やること これからご紹介するオーバードライブは、オペアンプ1石で作れるとてもシンプルな電子回路です。オペアンプの非反転増幅回路をベースに、ダイオードを使ったクリッピング回路で歪みを作っていきます。 また本記事ではオーバードライブの回路図だけでなく、動作の原理をくわしく解説してます。理解しながら自作エフェクターを製作してみたい方におすすめの内容です 実際に作ってみた印象 実際に作ってみると、Overdrive One はかなり扱いやすい回路でした。音作りの方向性としてはシンプルで、つまみの効き方も分かりやすく、クランチからしっかり歪んだ音まで無理なくつながっていきます。 また、オペアンプ式の回路はトランジスタ主体の歪み回路に比べて、設計どおりに増幅率を決めやすく、部品数も少なくまとめやすい のが利点です。自作エフェクターの中でも、比較的取り組みやすい部類だと思います。 数年後には、TS系オーバードライブを意識した Pipe Screamer も制作しました。よりチューブスクリーマ寄りの方向に興味がある方は、自作エフェクターまとめ記事 も参考になるかもしれません。 オーバードライブとは オーバードライブ(overdrive)とは、元々はギターアンプなどでゲインをあげた時に、過大な増幅で出力音が歪んでしまう状態のことをいいます。つまり、オーバードライブは「酷使」や「過負荷」の意味があります。 その後、1970年代に、意図的にオーバードライブを作り出すエフェクターが登場します。最初はゲインやボリュームなどのノブを持たないものでした。ただし、Maestro FZ-1 Fuzz-Toneや Fuzz Face 、Big Muffといったファズは、1960年代から作られてます。 ディストーション型 1970年にディストーション型のMXR Distortion +が登場します。ディストーション型は、オペアンプで増幅後、ダイオードでクリッピングさせる方式です。 非対称クリッピング型 1977年に発売したBOSSのOD-1では、オペアンプの帰還回路にクリッピングダイオードが挿入されます。また、ダイオードの個数や種類を非対称にすることで、より多くの倍音を得ることを狙ってます。 対称クリピング型 1979年に、IbanezのTS-808 チューブスクリーマ登場します。BOSSのOD-1と同様、クリッピングダイオードは帰還回路に挿入されますが、組とするダイオードは同じもので対称になります。非対称型くらべ、素直な歪が得られます(個人的感想)。 この記事で紹介するオーバードライブも、チューブスクリーマのような対称クリピング型になります。 つかうもの この記事で電子部品を紹介します。なお、エフェクタケースやフットスイッチ、ジャックなどは、このページの末尾で紹介してます。 TL072 オペアンプ JRC4558 オペアンプ 1N4148 ダイオード 100kΩ Bカーブ 可変抵抗 ユニバーサル基板 9V電池ボックス モノラル標準ジャック フットスイッチ 3PDT エフェクターケース オペアンプ オペアンプはTL072をおすすめします。TL072はFET入力型のオペアンプで、入力インピーダンスが高く、高周波特性も優れてます。また何より、安価で手に入りやすいです。 ...

公開: 2021年2月28日 · 更新: 2026年4月24日 · Toshihiko Arai

もっとも簡単なトランジスタ1石バッファー回路〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その5

エミッタフォロワ回路 この記事では、バイポーラトランジスタ(BJT)たったの1石で作れる、もっも簡単なギターorベース用のバッファー回路を紹介します。 今回紹介するバッファー回路は、トランジスタによるエミッタフォロワ回路です。エミッタフォロワ回路について簡単に解説いたします。1石バッファー回路が早く見たい方は飛ばしてもらって構いません。 エミッタフォロワの基本回路 こちらは、トランジスタを使ったエミッタフォロワの基本回路図です。 トランジスタは一般にFETより入力インピーダンスが低いと言われますが、図に示すエミッタフォロワ回路であれば入力インピーダンスをかなり高くできることが分かりました。この回路ではコレクタが電源に落とされているので、交流的にはコレクタが接地されているとみなすことができます。ですのでエミッタフォロワ回路はコレクタ接地回路とも呼ばれてます。 エミッタフォロワ回路では、信号電圧の増幅はしません。そのかわり、電流の増幅を行うことができます。できるだけ元の波形を維持したまま、電流だけ大きくすることで外部ノイズに強くなったり、その後の機材入力で音質劣化しなくなったりとメリットがあるわけです。こういった役割をする回路を「バッファー回路」などと呼びます。 さて、この回路の入力インピーダンスと出力インピーダンスを計算したいのですが、なかなか計算方法が分かりませんでした。いろんな書籍を見ても、エミッタ接地回路ばかりで、コレクタ接地回路に関してあまり詳しく書かれてません。探し続けた結果、なんとWikipediaにインピーダンスの計算式が詳しく書かれていました。つぎでは、エミッタフォロワのインピーダンスを計算していきましょう。 ▼ 参考サイト https://en.wikipedia.org/wiki/Common_collector https://www.nutsvolts.com/magazine/article/bipolar_transistor_cookbook_part_2 エミッタフォロワの入力インピーダンス まずは、エミッタフォロワ回路の入力インピーダンスについてです。回路図を見ながら数式をご覧ください。 Wikipediaによれば、エミッタフォロワの入力インピーダンスは次式で近似されます。 $$Z_{IN} \approx βR_E \tag{1}$$ ただし次の条件を満たすこと。 $$(g_mR_E \gg 1) \land (β \gg 1) \tag{2}$$ βは交流信号における電流増幅値ですが、ここでは直流電流増幅値(h_{FE})とほぼ同じであると考えることにします。 つまり、トランジスタの(h_{FE})の値を、そのままβに代入します。 相互コンダクタンス ところで、(g_m)とは相互コンダクタンス(ベースとエミッタ間の電圧変化に対するコレクタ電流変化の比)であり、次式で与えられます。 $$g_m=\frac{I_C}{V_T} \tag{3}$$ さらに、(V_T)は熱電圧と呼ばれ、常温(27℃)では26mVであることが知られてます。 $$V_T=\frac{KT}{q}=26[mV] \tag{4}$$ 以上により、 $$g_m=\frac{I_C}{26\times10^{-3}} \tag{5}$$ が導き出されます。 式2の条件を満たすよう、コレクタ電流(I_c)に気をつけましょう。 エミッタフォロワの出力インピーダンス 次に、エミッタフォロワの出力インピーダンスの計算式です。 エミッタフォロワの出力インピーダンスは、次式で近似されます。 $$Z_{OUT} \approx \frac{1}{g_m} + \frac{R_{source}}{β} \tag{6}$$ ただし次の条件を満たします。 $$(β \gg 1) \land (Z_{IN} \gg R_{source}) \tag{7}$$ (R_{source})とは、テブナン等価なソース抵抗で、つまりは信号源の出力インピーダンスと考えられます。例えばギター(パッシブ)が信号源になるならば、ピックアップの出力インピーダンスと考えて200kΩ〜500kΩあたりになるでしょう。 (R_{source})が大きくコレクタ電流も大きい場合、(\frac{1}{g_m})はほとんど無視できる大きさとなります。 よって、式6を次のように簡略化できます。 $$Z_{OUT} \approx \frac{R_{source}}{β} \tag{8}$$ ...

公開: 2021年2月18日 · 更新: 2026年2月17日 · Toshihiko Arai
NPNシリコントランジスタで作る!Fuzz Face|2SC1815とBC108で自作エフェクター

NPNシリコントランジスタで作る!Fuzz Face|2SC1815とBC108で自作エフェクター

この記事では、NPNシリコントランジスタで作るFuzz Faceクローンの製作例を紹介します。2SC1815版とBC108B版の両方を試し、回路図、ピン配置、基板製作、ケース加工、音の違いまでまとめました。 元祖のファズフェイスはPNPのゲルマニウムトランジスタが使われていましたが、ゲルマニウムトランジスタは現在入手が困難です。NPNシリコントランジスタを使うと、一般的な9V電源で扱いやすく、回路の見通しも良くなります。ギター直結とバッファーを挟んだ場合の違い、出力インピーダンスが高いことによる録音時の注意もポイントです。 この記事では2SC1815(2SC945)とBC108BのNPNシリコントランジスタを使ったFuzz Faceの制作例をご紹介してます。 Fuzz Faceについて ここでFuzz Faceの歴史をさらっておきましょう。 Fuzz Faceとは https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20588329 Fuzz Faceはアービターエレクトロニクス社が1966年にを発表したエフェクタペダルです。その後の、製造会社はいろいろと変わり、今ではDunlop社がFuzz Faceを作ってます。 Fuzz Faceは、ギターの歪み系「ファズ」として人気があり、ジミー・ヘンドリックスがFuzz Faceを使用していたことはあまりにも有名でしょう。Fuzz Faceはエレキギターだけでなく、エレキベースでも使用しているミュージシャンがいるようです。 Fuzz Faceの音色 Wikipedia で紹介されている、シリコントランジスタ型のFuzz Faceのサウンドを聴くことができます。 こちらは「The Jimi Hendrix Experience」のライブ映像です。ワウペダルと、Fuzz Faceを使っているようすを見ることができます。 https://www.youtube.com/watch?v=qFfnlYbFEiE&ab_channel=JimiHendrixVEVO ファズという言葉 「ファズ」という言葉は元々、電気部品の破損やスピーカーの故障などよって発生する歪音のことだそうです。ただし、オーバードライブもディストーションもファズも、明確な定義はなく、音色の印象で決められていることが多いようです。 Fuzz Faceのトランジスタ 初期のFuzz Faceではゲルマニウムトランジスタが使われていました。その後、ゲルマニウムトランジスタの衰退とともに、シリコントランジスタへ移り変わっていきます。ゲルマニウムトランジスタとシリコントランジスタでは、歪みの音質にかなり違いがあります。そのため、初期のゲルマニウムトランジスタが使われていた初期のFuzz Faceを愛用する方も多いはずです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Fuzz_Face#/media/File:Fuzzfacewiki2.jpg Fuzz Faceはなぜ丸いケース? Fuzz Faceの筐体が丸い形になった有名な話として、開発者のアイヴァー・アービターが、マイクスタンドの丸い台を見た時に思いついたそうです。マイクスタンドの土台は頑丈で、金属でできてますから、エフェクターに利用するにはちょうど良かったのでしょう。 2SC1815で作るFuzz Face ここからは、実際にNPNシリコントランジスタを使ってFuzz Faceを制作した様子をご紹介いたします。 回路図 下図はNPNシリコントランジスタに置き換えたFuzz Faceの回路図になります。国民的トランジスタである 2SC1815 の他、 2SC945 などが代替可能です。 番号 値 部品 個数 備考 C1 2.2uF 積層セラミックコンデンサ 1個 225 C2 22uF 電解コンデンサ 1個 極性あり C3 0.01uF フィルムコンデンサ 1個 103 R1 100kΩ カーボン抵抗 1個 茶黒黄金 R2 33kΩ カーボン抵抗 1個 橙橙橙金 R3 330Ω カーボン抵抗 1個 橙橙茶金 R4 8.2kΩ カーボン抵抗 1個 灰赤赤金 POT1 1kB 可変抵抗 1個 POT2 500kA 可変抵抗 1個 Q1、Q2 2SC1815 GR NPNシリコントランジスタ 2個 2SC1815のピン配置 2SC1815のピン配置は下図のとおりです。左からECBと並んでますので覚えて損はないです。 ...

公開: 2021年2月15日 · 更新: 2026年5月6日 · Toshihiko Arai

金管楽器のようなベースファズを作ってみた|Bass Brass Fuzz|自作エフェクタ製作

はじめに この記事では、管楽器のような音色を狙って作った自作ベースファズ「Bass Brass Fuzz」を紹介します。トランジスタ1石とゲルマニウムダイオードを使ったシンプルな回路で、パッシブベースを直接つないだときの少し丸い歪みが特徴です。 結論から言うと、ベース専用というより、入力インピーダンスの低さやゲルマニウムダイオードのクリッピングを利用して、金管楽器っぽい倍音の出方を楽しむ実験的なファズです。この記事では、回路の考え方、制作の流れ、試奏動画を順番にまとめます。 先に要点 トランジスタは2SC1815、ダイオードは1N60を使用 パッシブベースを直接入れる前提で音作り ゲルマニウムダイオードの低いVfでまろやかにクリップ 入力インピーダンスの低さも音色作りの一部として利用 試奏ではリバーブを強めにかけ、金管楽器っぽい響きを確認 つかうもの はじめに本記事でつかう電子部品をご紹介いたします。 BLランクのトランジスタ 汎用的なトランジスタ2SC1815を使用しました。ランクは増幅率の高いBLランクを使用しましたが、他のトランジスタでも代替可能です。 まろやかな歪み、ゲルマニウムダイオード クリッピングするためのダイオードとして、 ゲルマニウムダイオードで有名な1N60 を2つ使います。シリコンダイオードはザラついた歪みになり、味気ない感じです。ゲルマニウムダイオードにしてみたところ、自然でまろやかで管楽器のような音色にピッタリでした。 その他の電子部品 その他にカーボン抵抗やコンデンサを使います。具体的な値は次の回路図を参照してください。 Bass Brass Fuzzの回路図 下図は、管楽器のような音色を奏でるベースファズ「Bass Brass Fuzz」の回路図です。J1の端子はそれぞれ、O(OUT)、I(IN)、V(9V)、G(GND)の意味です。 この回路は パッシブベースの入力 を想定してます。出力インピーダンスの低いアクティブベースだとうまく歪みません。 以下、この回路の簡単な解説です。 ダイオードのクリッピング回路 ダイオードに電圧をかけると、電圧降下が起きるのですが、順方向に電流が流れているときに降下した電圧のことを順方向電圧(Vf)と呼びます。ダイオードに音の信号(電圧)をかけると、 Vf以上の電圧はカット(クリップ)され、音が歪む という仕組みです。ディストーションやオーバードライブの回路でよくやられる方法です。 また、ダイオードには極性があり、電流は一方向にしか流れません。プラスマイナスの両方をクリップするためには、2つのダイオードを逆向きに並べる必要があるわけです。このような回路を、 クリッピング回路やクリッパ回路 などと呼びます。 さて、シリコンダイオードの場合、一般にVfは 0.6V程度 ですが、ゲルマニウムダイオードの場合はVfが 0.3V程度 と低めです。ここら辺の違いが、歪みの音色にも現れるのでしょう。 自己バイアス回路 トランジスタの役割を考える上で、ダイオードやコンデンサを取り払うと分かりやすいです。先ほどの回路は、トランジスタの 自己バイアス回路 と呼ばれるものを使ってます。 トランジスタの自己バイアス回路は、コレクタの出力の一部(入力信号とは逆相)が負帰還抵抗を介してベースへ戻ります。このフィードバックにより、 温度安定性が高く、また周波数特性が良い 特徴があります。ただし、自己バイアス回路では入力インピーダンスを高くはできません。 実はこの入力インピーダンスの低さが、管楽器のような音色を作る要素になっていました。本来パッシブベースは出力インピーダンスが高いため、入力インピーダンスが高い回路で受けないと音質が劣化してしまいます。しかし、そのことが逆に功を奏し、良い感じで高域が削られてキレイに歪んでくれます。逆にアクティブベースだと信号のインピーダンスが低くて意図したように歪んでくれませんでした。 コンデンサで高域をカット さて、負帰還抵抗に並列に入っているコンデンサC2は、高音成分を除去する ハイカットフィルタ の働きをします。数十pFから0.1μFのあいだで音を聴きながら検証し、最終的に0.022μに決定しました。 Bass Brass Fuzzの制作 ここまで紹介してきた内容で、Bass Brass Fuzzを基板から制作してみました。 配線をトナー転写 レーザープリンタのトナー(プラスチック粒子)を、転写シートに印刷して、アイロンでカット基板へ転写します。カット基板はあらかじめスチールタワシで擦って、アルコールで脱脂してから転写すると失敗しにくいです。 カット基板に転写完了です。 細かい欠け部分は、レジストペンで修正します。サクラの油性マジックでも代用可能です。 エッチング、はんだ付け エッチング液で銅を腐食させます。残ったトナー部分はアセトンで除去します。その後ルーターの0.8mmドリルで穴あけしました。 ...

公開: 2021年2月10日 · 更新: 2026年5月2日 · Toshihiko Arai

ピンクノイズ回路|ホワイトノイズとラグ・リードフィルタで作る

はじめに 前回、ホワイトノイズを作ったが今度はピンクノイズを作ってみたい。ピンクノイズは、ホワイトノイズに何らかのローパスフィルタをかければ作れそうだ。しかし、ローパスフィルタは一般的に-6dB/octである。ピンクノイズの場合は-3dB/octで減衰させなければならない。ちなみに-3dB/octは「1/fゆらぎ」と呼ばれている。 どうやってピンクノイズを作るのか? さて、どうやったらピンクノイズのフィルタ回路を実現できるだろうかと調べまくった。すると、このような回路図を見つけることができた。 ローパスフィルタに似た形だが、コンデンサと直列に抵抗が入っている。調べると、ラグ・リードフィルタ(lag/lead filter)回路と呼ぶらしい。ちなみに、抵抗1個とコンデンサ1個でつくられるRC回路はラグフィルタと呼ばれるようだ。 巷の回路の定数をそのまま使えばピンクノイズが作れそうだが、普段あまり使わない数値のために電子部品が手持ちになかった。もっと簡単に作れる方法はないだろうかと探し続けた。サクッとピンクノイズを作る予定だったが、実はこのプロジェクトを思い立ってから1週間以上の時間を費やしてしまっている。 ようやく、もっとも簡単なピンクノイズフィルタを見つけることができた。このことは、記事の最後で説明するとしよう。 また、ラグ・リードフィルタの仕組みも調べてみたかったので、この記事ではラグ・リードフィルタの伝達関数や周波数特性をシミュレーションしつつ、もっとも簡単なピンクノイズフィルタの作り方を紹介していく。 ラグ・リードフィルタの伝達関数 Pythonで周波数特性をシミュレーションしたいため、ラグ・リードフィルタの伝達関数を計算してみた。まずは、回路図のような1つだけのラグ・リードフィルタの伝達関数を考えてみよう。 出力先に繋がれる入力インピーダンスを無限大だと仮定すると、 $$ v_i(t) = R_1i(t)+v_o(t) \tag{1} $$ より、 $$ i(t)=\frac{v_i(t)-v_o(t)}{R_1} \tag{2} $$ である。また、 $$ v_o(t)=R_2i(t)+\frac{1}{C}\int i(t)dt \tag{3} $$ である。式2を式3へ代入すると、 $$v_o(t)=\frac{R_2}{R_1}(v_i(t)-v_o(t))+\frac{1}{CR_1}\int(v_i(t)-v_o(t))dt \tag{4}$$ となる。 (v_i(0)=0, v_o(0)=0)として式4の両辺をラプラス変換すると、 $$ V_o(s)=\frac{R_2}{R_1}(V_i(s)-V_o(s))+\frac{1}{CR_1}(\frac{V_i(s)}{s} - \frac{V_o(s)}{s}) \tag{5} $$ となり、式5を(V_o(s),V_i(s))でまとめていくと $$(1+\frac{R_2}{R_1}+\frac{1}{CR_1s})V_o(s) = (\frac{R_2}{R_1}+\frac{1}{CR_1s})V_i(s) \tag{6}$$ よって、伝達関数(H(s))は $$H(s)=\frac{V_o(s)}{V_i(s)}=\frac{1+\frac{R_2}{R_1}+\frac{1}{CR_1s}}{\frac{R_2}{R_1}+\frac{1}{CR_1s}} \tag{7}$$ となる。これを簡潔にまとめると、 $$H(s)=\frac{CR_2s+1}{C(R_1+R_2)s+1} \tag{8}$$ であり、ラグ・リードフィルタの伝達関数が導き出された。 ラグ・リードフィルタの周波数特性をPythonで調べてみよう 式8の伝達関数を使って、Pythonでラグ・リードフィルタの周波数特性を調べてみよう。次のプログラムの通りR1、R2、Cの値をいろいろと変えてシミュレーションしてみた。 from control.matlab import * import matplotlib.pyplot as plt if __name__ == '__main__': R1 = 6.8 * pow(10, 3) # kΩ R2 = 3 * pow(10, 3) # kΩ C = 1 * pow(10, -6) # μF G1 = tf([C*R2, 1], [C*(R1+R2), 1]) R1 = 6.8 * pow(10, 3) # kΩ R2 = 1 * pow(10, 3) # kΩ C = 267 * pow(10, -9) # nF G2 = tf([C*R2, 1], [C*(R1+R2), 1]) R1 = 6.8 * pow(10, 3) # kΩ R2 = 300 # Ω C = 94 * pow(10, -9) # nF G3 = tf([C*R2, 1], [C*(R1+R2), 1]) R1 = 6.8 * pow(10, 3) # kΩ R2 = 0 C = 33 * pow(10, -9) # nF G4 = tf([C*R2, 1], [C*(R1+R2), 1]) W = logspace(1, 5) # 対数スケールの配列 bode(G1, W, Hz=True) bode(G2, W, Hz=True) bode(G3, W, Hz=True) bode(G4, W, Hz=True) plt.show() ...

公開: 2021年1月30日 · 更新: 2026年3月11日 · Toshihiko Arai
オペアンプの音質比較 5種類+1 一番音質が良いのはどれか!?〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その3

オペアンプの音質比較 5種類+1 一番音質が良いのはどれか!?〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その3

はじめに 自作エフェクターや音響機材の製作で昔から広く使われているオペアンプが、5532・4558・TL072の3つです。どのオペアンプも低価格で入手しやすくなってます。でも、どのオペアンプが一番音が良いのか比較したことはありますでしょうか?気になりますよね。 今回はそんな悩みを解決するべく、実際にそれぞれのオペアンプでバッファー回路を組み、ベース録音で比較してみました。さらに082、2114のオペアンプも加え、山水のトランスST-14で作ったパッシブDIとも音質を比較します。 結論から言うと、数値上の性能だけでは音の好みは決まりませんでした。TL072は明るく、4558はまとまりがあり、5532は太く、ST-14は自然な迫力があり、同じバッファー用途でもかなり印象が変わります。 ギターで比較しないの?と思われるかも知れませんが、ベースは超低音域から豊かな倍音が高域まで広い幅の周波数が含まれてますので、音質を比較するには良い楽器です。動画でもご視聴いただけますので、ぜひ最後までご覧ください。 エフェクターや音響機材の電子工作をやっていると、オペアンプによる音質の違いを知りたくなりますよね?実のところ、試聴比較するまで私は大した違いはないだろうと高を括ってました。数メガを扱う高周波じゃないんだから、音質なんてどれも変わりっこない。 しかし今回の実験で 驚くほど音質が違う ことが分かりました!オペアンプというかバッファー回路は侮れません! こちらの動画でオペアンプによる違いを実験した動画を紹介します。今回組んだ回路を使ってベースで演奏してみました。ヘッドホンでご視聴になれば、はっきりと音質の違いが分かります。 動画を再生 オペアンプで作るバッファー回路 ここからは実際に作ったバッファー回路を紹介します。オペアンプに合わせて、2つのタイプのバッファー回路を用意しました。 072・082・4558用のバッファー回路 次は 072や082、4558用のバッファー回路図 です。 記号 型番または値 部品名 数量 備考 C1 0.1uF フィルムコンデンサ 1個 104 C2 10uF 電解コンデンサ 1個 極性あり C3 1uF 積層セラミックコンデンサ 1個 105 R1、R2 1MΩ カーボン抵抗 2個 茶黒緑金 R3、R4、R5 100kΩ カーボン抵抗 3個 茶黒黄金 U1 JRC072D オペアンプ 1個 U1 8P 丸ピICソケット 1個 シンプルなボルテージフォロワのバッファー回路になります。072や4558は 入力インピーダンスが高く(入力インピーダンスが数MΩ)、ギターなどのハイインピーダンス出力を直接受ける ことができます。ですから、072、082、4558などのオペアンプが入れ替え可能です。 ...

公開: 2020年11月15日 · 更新: 2026年5月1日 · Toshihiko Arai
オペアンプ5532を使ったギター・ベースバッファー回路〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その2

オペアンプ5532を使ったギター・ベースバッファー回路〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その2

はじめに この記事では、ギターやベースで使えるバッファーエフェクターの作り方をご紹介いたします。オペアンプ5532を使用します。5532の入力インピーダンスはそれほど高くないため、ギターやベースなどのハイインピーダンス出力を直接繋ぐことはできません。そのため、FETを前段に挟んで入力インピーダンスを高くする方法をご紹介してます。 いま見返すと、この記事の5532バッファーは 当時作った実験機・基板制作の記録 という位置づけが強いです。後に作った BUFFER!! V2.0 の実験ノート や、カップリングコンデンサをなくした BUFFER!! V3.2 へつながる前段階として読むと、設計の変化が分かりやすいと思います。 自作エフェクター全体の流れを見たい方は、まず 2020年頃に熱中して製作した自作エフェクター達 もあわせてどうぞ。バッファー回路だけをシンプルに試したい場合は、部品点数の少ない FET1石バッファー回路 の方が取り組みやすいです。 バッファー回路とは 検索でこの記事に辿りついた方には釈迦に説法ですが、バッファー回路とは何か簡単に解説します。 ハイインピーダンスなピックアップ出力 ギターやベースなどの ピックアップから出力される信号はとても弱い信号 です。電圧は1Vppほどあるのですが、電流があまりありません。誤解を恐れずに言えば、この 電流が少ない信号のことをハイインピーダンス信号 と言ってます。 ハイインピーダンスはノイズに弱い とよく言われますが、外部ノイズのほとんどは本来は微弱電流なのですが、ハイインピーダンスの信号も電流が弱いので混在した時にノイズの影響力が大きくなると言った理由から来てます。 バッファー回路は電流増幅器 そこで電圧(信号)の大きさを変えずに、電流だけを増幅してあげれば良くない?と思って考えだされたのがバッファー回路なんですね。ですから バッファーは電流増幅器 とも言えるでしょう。ちなみにバッファ(Buffer)は英語で緩衝器の意味です。電車同士の接続部分をBufferと言ったりします。 さて、音響機材の接続で当たり前のように行なっていることですが、 ローインピーダンス出力をハイインピーダンス入力へ繋ぐことは良いのですが、その逆はNG です。つまり、ハイインピーダンス出力をローインピーダンス入力の音響機材などへ直接繋ごうとすると、電流が十分取り出せないので音質劣化が起こります。具体的には低音がスカスカだったり、なんかぺこぺこしたしょぼい音だったり音量が小さいといった感じの状況が起こります。そんな経験をされた方は多いのではないでしょうか? バッファーを介して音質クリアに そこでバッファー回路の登場です。ハイインピーダンス出力の楽器を、 バッファーを通してローインピーダンス信号へ変換 してから音響機材へ繋ぐことで見違えるほどクリアでスッキリした音になります。そんなバッファとしての役割で最も有名なのが、DI(ダイレクトボックス)ではないでしょうか?録音卓で必ず使われるDIは、アンバランス信号をバランス信号へ変換する役割も担ってます。 現代のエフェクターのほとんどがバッファ内蔵 また現代のエフェクターのほとんどが、最初の入力段にハイインピーダンスを入力できるようなバッファー回路が設けられてます。逆に古いエフェクターではそれほど入力インピーダンスが高くなく、楽器によって音色変化が大きく違うなんてことがあります。以前作った Fuzz Face も入力インピーダンスが低くめなので、ギターやボリューム調整によって大きく音色が変わってしまいます。むしろそれが人気だったりしますでしょうか。そういったエフェクターに、通常のバッファー回路を挟んでしまうと今度は歪みすぎるといった事態になりますからなかなか難しい話です。 使うもの バッファー回路を作るにあたって、使うものをご紹介いたします。 NE5532 オペアンプ 2SK30A 2SK303 JFET ユニバーサル基板 9V電池ボックス モノラル標準ジャック オペアンプ5532 デュアルオペアンプの5532を使用します。5532は古くからあるオペアンプですが、高音質なのに低価格で手に入りやすく、今でもさまざまな音響機材で使われてます。 その他 その他に必要な電子部品は後述の回路図をご覧ください。 オペアンプ5532を使ったバッファーエフェクターの製作 回路図 下図は、オペアンプ5532を使ったギターやベースで使えるバッファーエフェクターの回路図です。画像をクリックすると拡大できます。 入力インピーダンスは入力段の2つの1MΩの抵抗並列合成なので、 500kΩ になります。出力インピーダンスはオペアンプなので 100Ω以下 になるようです。 FETの役割 最初にも触れた通り、5532の入力インピーダンスはギターを直で受けれるほど高くはありません。数百キロΩ程度だそうです。4558やTL072ではギター信号も直接受けれるのですが、5532の場合はちょっと厳しいです。そのため、 前段のFETでハイインピーダンスを5532でも受け取れるようにローインピーダンス信号に変換 してあげます。ここのFETには2SK303や2SK30Aなどが使用できます。ただし、FETのピン端子はG、D、Sの並びが統一されてないので配線にご注意ください。 ...

公開: 2020年11月9日 · 更新: 2026年4月26日 · Toshihiko Arai
【エフェクタ製作】原音とエフェクト音をミックスする「BLENDER」・ハンドメイドプロジェクト

【エフェクタ製作】原音とエフェクト音をミックスする「BLENDER」・ハンドメイドプロジェクト

はじめに この記事では、ギターやベースの原音とエフェクト音をミックスできる「BLENDER」という自作エフェクターの作り方や動作原理を紹介します。ファズ音に原音を足したいときや、リバーブ音と原音の割合を調整したいときに使う、ブレンド専用のペダルです。 この記事では、衝動的に作ったV1(バージョン1・冒頭の写真 2020年頃の製作)と、その後に作った改良版V2をまとめています。前半はV1の製作、後半はV2の回路と製作を読む構成です。 先に要点 BLENDERは原音と外部エフェクト音を混ぜるためのペダル V1は位相反転切り替えを持つ実験的な構成 V2は5532を使い、原音とエフェクト音の分離を重視 SEND先のエフェクターは入力インピーダンスが高い前提 ファズや空間系を原音に少し混ぜたいときに使いやすい 動画を再生 BLENDER(ブレンダー)エフェクターとは 改めてBLENDERのエフェクト機能をおさらいしておきます。下図は、この記事でご紹介するBLENDERの役割をイラストで表したものです。 BLENDERはエフェクターといっても、 BLENDER自体には積極的に音を変える機能は備わってません。 あくまで外部エフェクタと原音のミックス作業を行う音響機材です。 市販品だとBOSSのラインセレクターLS2が似たような機能を果たします。ただしLS2は外部エフェクタをA/Bの2チャンネルも繋げることができ、ミックス機能だけでなく、A/Bボックスの役割もある多機能なエフェクタです。原音とエフェクト音のブレンドというよりは、原音にAとBの音を足し算するといった使い方になります。 ここから紹介するBLENDERは、原音とエフェクト音のバランス調整に特化したよりシンプルなものです。 BLENDER V1 回路図 下図はBLENDER V1の回路です。オペアンプは4558を指定してますが、入力インピーダンスが数M以上のオペアンプと入れ替え可能です。たとえばTL072など。 BLENDER V1の回路では原音のミックスだけでなく、位相反転の機能も付けてあります。 エフェクターによっては位相が反転してしまうものがあります。その場合に、位相反転されたエフェクト音と原音をブレンドしてしまうと音が打ち消しあってスカスカなサウンドになってしまいます。そういった時に位相反転ができると便利というわけです。 回路の性質から原音ミックスだけでなく、パラレル出力として使ったり、バッファアンプとしてもご利用いただけます。 前段、バッファー回路 簡単に回路図の説明をしておきます。まず、前段のオペアンプはバッファ回路です。ギターのハイインピーダンス出力を受けることができるように、入力インピーダンスを500kΩになるように設計されてます。 位相反転回路 後段(下段)のオペアンプが位相反転機能を担ってます。反転増幅回路を使用した増幅率1倍のバッファ回路です。実際に組み立てるときは、非反転信号の「SEND NORMAL」と反転信号の「SEND INVERTED」をトグルスイッチで切り替えられるようにしました。 バランサー回路 BLENDERのブレンド機能を担うバランサー回路部分が下図です。 バッファー回路を通した原音(左側からの信号)と、エフェクターから返ってきたRETURN信号を100kBの可変抵抗でミックスさせてOUT出力としてます。 ただしこの回路の注意点として、SEND先のエフェクタ機材の入力インピーダンスが十分に高いことを想定してます。 そうでないと原音に影響してしまい、バランスボリュームがほとんど効かなくなるのでご注意ください。現代のエフェクタならほぼ問題はないかと思いますが、オールドエフェクタなどには入力インピーダンスが低いものが多く存在します。その場合には、BLENDERと送り先のエフェクタの間にバッファエフェクタをはさむと良いでしょう。 また、完全には原音とエフェクター音を切り分けることはできない回路設計です。ただしBLENDERの用途からして、そこまで厳密な要求はないものと考えてこれで良しとしました。原音とエフェクト音を完全に切り分けた改良版は、後半の記事のV2で解説いたします。 仮想GND(バイアス電源)回路 下図の回路は、9Vの単一電源でオペアンプを動作させるために作る仮想GNDです。9V電圧を10kΩの抵抗2つで分圧し、中間の電圧を仮想GND(バイアス)としてます。並列に入っているコンデンサは、バイアス電位を安定させるためのものです。 ...

公開: 2020年11月4日 · 更新: 2026年5月2日 · Toshihiko Arai
パッシブDI・ダイレクトボックスの製作〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その1

パッシブDI・ダイレクトボックスの製作〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その1

はじめに 無電源で動く「パッシブDI・ダイレクトボックス」を作ってみました。サンスイのトランスST-14を使い、入力インピーダンス500kΩでギターやベースなどのパッシブPU信号を受けられるようにした製作記録です。 この記事では、DIの役割、ST-14の仕様、録音して分かった音の印象、バランス伝送がノイズに強い理由をまとめます。録音機材へ直接つなぐ前提なので、信号レベルが小さくなる点と、録音側で十分なゲインが必要になる点がポイントです。 DI(ダイレクトボックス)の役割 DIの役割は主に次の3つが挙げられます。 インピーダンスの高い楽器の出力をローインピーダンスへ変換 アンバランス信号をバランスアウトへ変換 機材間の接続を整理し、録音やPAへ信号を渡しやすくする ①は、ギターやベースなどのPU信号はハイインピーダンスため、そのまま録音機材へ繋ぐと高域が劣化したり、ノイズ発生してしまうといった問題が生じます。そこでローインピーダンスへ変換することで、音質をそのまま維持してノイズに強い信号になり、キレイに録音できるようになります。 ②は長いケーブルになった時にとくに重要で、バランス信号にすることでノイズに強くなります。このことは後ほど詳しく解説します。 他にも、録音機材とのグラウンドループをカットする機能だったり、録音機材とギターアンプへの信号を分岐する役割があったりします。ちなみにDIはダイレクト・インジェクションの略です。 パッシブDI ST-14の仕様 パッシブDI ST-14の仕様を解説します。ケースの中には、トランスが1つ入っているだけです。サンスイのインプットトランスとしてリリースされているST-14です。 ST-14 インピーダンス 巻線比 1次 500kΩ 22.4 2次 1kΩ 1 1次側が500kΩもあるのでこちらを入力とすれば、ギターやベースなどのハイインピーダンス信号を受けれます。また2次側を出力とし、1kΩの出力インピーダンスであれば、録音機材へそのまま接続できます。 参考に製作したパッシブDIの回路図を載せておきます。市販品のようにGNDオープンやAMPスルーアウト機能はありませんが、その分とてもコンパクトなDIを作ることができました。XLRコネクタに改造する場合は、HOTを2番にSLEEVEを3番に接続します。 ケースは小型アルミダイキャストを使用、サイズは約93×36×35mmです。安定のノイトリックのステレオフォーンジャックで入出力を実装しました。トランス鳴きが起こらないように、トランスは接着剤でシャーシに固定してあります。 パッシブDI ST-14の音色・特徴 パッシブDI ST-14の音色を比較した動画を公開してますのでご覧ください。 動画を再生 トランスを使ってしまうと「古臭い音」になると思っていましたが、そんなことはまったくありません。高域まで伸びており、非常に抜けの良いサウンドです。特にギターで使うと相性が良さそうです。ベースで使う場合には少し注意が必要で、というのもST-14の周波数特性が左肩下がりなので低音域が少し削られてしまいます。気になる方はアクティブDIを使いましょう。ソロベースとして使う分にはむしろこのパッシブDIがマッチします。 また、使用上の注意点があります。それは出力信号が小さいということです。ST-14では、巻線比が約22倍ですから電圧も1/22に減衰して信号が小さくなってしまいます。よって録音機材でゲインを稼がなければいけないのですが、実際録音してみると40dB以上は増幅しないと厳しいです。また録音機材によってはゲインをあげるとヒスノイズが目立ってしまうものがあるので、それなりのスペックが録音機材に要求されます。動画の録音ではZOOM H5を使って、ソフト側でノーマライズして音量を調整しました。ちなみにZOOM H5 の入力ゲインは55dBあります。 パッシブDI ST-14の音色・特徴をまとめます。 ギターやソロベースに最適! 録音機材で40dB以上増幅が必要 パッシブとアクティブの違い パッシブがあればアクティブもあります。パッシブとアクティブの違い、電池駆動か電池なしで駆動かの違いです。製品で有名なダイレクトボックスとして、カントリーマンのTYPE85や、BOSSのDI1が挙げられます。スタジオやライブハウスで、一度は見かけたこともあるのではないでしょうか?これらのダイレクトボックスは電池で駆動する、つまりアクティブ機材になります。ここで紹介するDIは電池なしで駆動するパッシブ機材です。 ...

公開: 2020年10月31日 · 更新: 2026年5月3日 · Toshihiko Arai