ECM自作マイクの作り方【完全ガイド】WM-61A・ピンマイク・ファンタム電源まで

ECMを使えば、数百円のパーツで本格的なピンマイクを自作できます。 この記事では、WM-61A相当品を中心に、基本回路の組み方からスマホ・PC接続、風切り音対策のウインドジャマー、ファンタム電源による高音質化まで、数年にわたる試行錯誤をもとに解説します。 自作マイクというと難しそうに見えるかもしれませんが、ECMを使えばかなり小さく作れますし、素朴でナチュラルな音を狙いやすい のが面白いところです。特に胸元に付けるピンマイク用途では、自作ならではの自由度があります。 一方で、無理に自作をおすすめしたいわけではありません。思いついたから試してみた、という側面も強く、完成度だけでいえば製品に敵わない部分もあります。ただ、構造を理解しながら試せることと自分の欲しい形に寄せられることは自作ならではの魅力です。 3行でわかるこの記事 ✅ ECMの基本回路から、スマホ・PC用ピンマイクの作り方がわかる ✅ ウインドジャマーの自作方法と、周波数特性の実験データを紹介 ✅ ファンタム電源(+48V)でECMを高音質化する回路図あり ECMの基本回路と使い方 はじめに、この記事で使うものを紹介します。 ECMとは ECMとは、エレクトレットコンデンサマイクの略称です。2枚の電極板の片方が振動することで音を電気信号として取り出す仕組みで、コンデンサマイクの一種です。 通常のコンデンサマイクと異なるのは、エレクトレットというあらかじめ電気を帯びた素子が使われていること。外部から電圧をかけて誘電分極を起こす必要がないため、小型化が可能です。スマホやイヤホンをはじめ、小型機器のマイクとして広く使われています。 なお、ECMには通常FETが内蔵されているため、動作には外部電源が必要です。 ECMカプセルの構造 ECMカプセルの内部構造は、一般的に次のようになっています。 FETの役割 ECMのアルミカプセルの中には、マイクユニットだけでなくFETが内蔵されています。FETはマイクユニットが発生する超微弱な電流を増幅する役割を持ちます。つまり、信号の出力インピーダンスを低くし、外来ノイズの影響を受けにくくする働きをします。 ECMカプセル 今回使用したECMは、秋月電子通商で購入した WM-61A相当品 です。 WM-61Aとは WM-61Aとは、かつてパナソニックが製造していたECMで、音質に定評があることで知られています。すでに廃盤となっているため、今回使うのはあくまでWM-61A相当品です。基本的にECMの使い方はどれも同じなので、他のECMでもこの記事のやり方が参考になります。 WM-61A相当品は通常のECMよりも小型ですが、その大きさからは想像できないほどパワフルな音質です。さらに安くて入手しやすく、作例も多いのが大きな利点で、自作マイクを試したい人にとって情報が多く追いかけやすいECMでもあります。 その他の電子部品 その他に、固定抵抗と電解コンデンサを使います。2.2kΩの抵抗があればベストです。コンデンサは22uF程度の電解コンデンサで構いません。 ECMの回路図例 実際にECMを使うには、次のような回路を組みます。 このような定数で設定しました。 名称 値 +Vs 1.2V RL 3.3k C 22μF ECMの供給電圧 ECMの内部にはFETが入っているため、外部電源を供給する必要があります。今回使うECMは1.1〜10Vの電圧範囲で動作でき、標準電圧は2.0Vです。つまり、電池一本でも動かせます。 ECMの極性 ECMの端子には、プラスとマイナスの極性があります。マイナスはアルミカプセルと同じGNDに落とされています。どちらがプラスかマイナスかわからなくなった場合は、テスターでアルミカプセルと端子を導通させてみて、ショートするほうがマイナス端子と判断しましょう。 負荷抵抗RL ECMへ電源供給する際のRLの負荷抵抗は、2.2kΩが標準です。手持ちの抵抗の都合上3.3kΩとしましたが問題ありません。実際にいろいろな抵抗を試してきて、1kΩ〜10kΩの範囲で使用できました。抵抗値を小さくすれば出力が大きくなり、大きくすると出力は小さくなります。 カップリングコンデンサC コンデンサCは、いわゆるカップリングコンデンサです。カップリングコンデンサの役割は、信号のような交流ACと、供給電圧のような直流DC成分を分けることにあります。 カップリングコンデンサの値を決めるには、その先につなぐ機材の入力インピーダンスを考える必要があります。マイク入力などにつなぐ場合、入力インピーダンスを600Ω以上と考えればよいでしょう。入力インピーダンスを600Ωと想定した場合、22μFではカットオフ周波数は12Hzになります。 カットオフ周波数とは カットオフ周波数とは、ローパスフィルタやハイパスフィルタにおいて「その周波数以下または以上がどんどん通りにくくなる」境界の周波数です。正確には、一次フィルタで-6dB下がった地点の周波数を「カットオフ周波数」と呼びます。 一次RCフィルタ回路におけるカットオフ周波数は、次の式で計算できます。 $$ fc = \frac{1}{2πCR} $$ ブレッドボードで扱いやすくするために、ECMをモジュール化しました。少ない部品の回路でも、モジュール化しておくと後々使い回しが効いて便利です。 音質は? WM-61A相当品の音質の感想です。音は落ち着いた音色で、パワフルな印象があります。いろいろなECMと比較してみても、WM-61A系は特徴的な感じがします。 自作しやすさと入手性のバランスで見ると、WM-61A相当品はかなり優秀です。一方で、音そのものにより強くこだわるなら、後半で紹介する フォーリーフのECM のほうが私は好みです。 ECMを本格的に高音質で使いたい場合は、ぜひファンタム電源化してみましょう。 発展 このECMモジュールを使って、Raspberry Piで音センサにして遊んでみました。ECMをイヤホンに埋め込んで、ASMRのバイノーラルマイクを作ってみても面白そうです。 ...

公開: 2020年11月23日 · 更新: 2026年4月24日 · Toshihiko Arai
オペアンプの音質比較 5種類+1 一番音質が良いのはどれか!?〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その3

オペアンプの音質比較 5種類+1 一番音質が良いのはどれか!?〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その3

はじめに 自作エフェクターや音響機材の製作で昔から広く使われているオペアンプが、5532・4558・TL072の3つです。どのオペアンプも低価格で入手しやすくなってます。でも、どのオペアンプが一番音が良いのか比較したことはありますでしょうか?気になりますよね。 今回はそんな悩みを解決するべく、実際にそれぞれのオペアンプでバッファー回路を組み、ベース録音で比較してみました。さらに082、2114のオペアンプも加え、山水のトランスST-14で作ったパッシブDIとも音質を比較します。 結論から言うと、数値上の性能だけでは音の好みは決まりませんでした。TL072は明るく、4558はまとまりがあり、5532は太く、ST-14は自然な迫力があり、同じバッファー用途でもかなり印象が変わります。 ギターで比較しないの?と思われるかも知れませんが、ベースは超低音域から豊かな倍音が高域まで広い幅の周波数が含まれてますので、音質を比較するには良い楽器です。動画でもご視聴いただけますので、ぜひ最後までご覧ください。 エフェクターや音響機材の電子工作をやっていると、オペアンプによる音質の違いを知りたくなりますよね?実のところ、試聴比較するまで私は大した違いはないだろうと高を括ってました。数メガを扱う高周波じゃないんだから、音質なんてどれも変わりっこない。 しかし今回の実験で 驚くほど音質が違う ことが分かりました!オペアンプというかバッファー回路は侮れません! こちらの動画でオペアンプによる違いを実験した動画を紹介します。今回組んだ回路を使ってベースで演奏してみました。ヘッドホンでご視聴になれば、はっきりと音質の違いが分かります。 動画を再生 オペアンプで作るバッファー回路 ここからは実際に作ったバッファー回路を紹介します。オペアンプに合わせて、2つのタイプのバッファー回路を用意しました。 072・082・4558用のバッファー回路 次は 072や082、4558用のバッファー回路図 です。 記号 型番または値 部品名 数量 備考 C1 0.1uF フィルムコンデンサ 1個 104 C2 10uF 電解コンデンサ 1個 極性あり C3 1uF 積層セラミックコンデンサ 1個 105 R1、R2 1MΩ カーボン抵抗 2個 茶黒緑金 R3、R4、R5 100kΩ カーボン抵抗 3個 茶黒黄金 U1 JRC072D オペアンプ 1個 U1 8P 丸ピICソケット 1個 シンプルなボルテージフォロワのバッファー回路になります。072や4558は 入力インピーダンスが高く(入力インピーダンスが数MΩ)、ギターなどのハイインピーダンス出力を直接受ける ことができます。ですから、072、082、4558などのオペアンプが入れ替え可能です。 ...

公開: 2020年11月15日 · 更新: 2026年5月1日 · Toshihiko Arai
オペアンプ5532を使ったギター・ベースバッファー回路〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その2

オペアンプ5532を使ったギター・ベースバッファー回路〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その2

はじめに この記事では、ギターやベースで使えるバッファーエフェクターの作り方をご紹介いたします。オペアンプ5532を使用します。5532の入力インピーダンスはそれほど高くないため、ギターやベースなどのハイインピーダンス出力を直接繋ぐことはできません。そのため、FETを前段に挟んで入力インピーダンスを高くする方法をご紹介してます。 いま見返すと、この記事の5532バッファーは 当時作った実験機・基板制作の記録 という位置づけが強いです。後に作った BUFFER!! V2.0 の実験ノート や、カップリングコンデンサをなくした BUFFER!! V3.2 へつながる前段階として読むと、設計の変化が分かりやすいと思います。 自作エフェクター全体の流れを見たい方は、まず 2020年頃に熱中して製作した自作エフェクター達 もあわせてどうぞ。バッファー回路だけをシンプルに試したい場合は、部品点数の少ない FET1石バッファー回路 の方が取り組みやすいです。 バッファー回路とは 検索でこの記事に辿りついた方には釈迦に説法ですが、バッファー回路とは何か簡単に解説します。 ハイインピーダンスなピックアップ出力 ギターやベースなどの ピックアップから出力される信号はとても弱い信号 です。電圧は1Vppほどあるのですが、電流があまりありません。誤解を恐れずに言えば、この 電流が少ない信号のことをハイインピーダンス信号 と言ってます。 ハイインピーダンスはノイズに弱い とよく言われますが、外部ノイズのほとんどは本来は微弱電流なのですが、ハイインピーダンスの信号も電流が弱いので混在した時にノイズの影響力が大きくなると言った理由から来てます。 バッファー回路は電流増幅器 そこで電圧(信号)の大きさを変えずに、電流だけを増幅してあげれば良くない?と思って考えだされたのがバッファー回路なんですね。ですから バッファーは電流増幅器 とも言えるでしょう。ちなみにバッファ(Buffer)は英語で緩衝器の意味です。電車同士の接続部分をBufferと言ったりします。 さて、音響機材の接続で当たり前のように行なっていることですが、 ローインピーダンス出力をハイインピーダンス入力へ繋ぐことは良いのですが、その逆はNG です。つまり、ハイインピーダンス出力をローインピーダンス入力の音響機材などへ直接繋ごうとすると、電流が十分取り出せないので音質劣化が起こります。具体的には低音がスカスカだったり、なんかぺこぺこしたしょぼい音だったり音量が小さいといった感じの状況が起こります。そんな経験をされた方は多いのではないでしょうか? バッファーを介して音質クリアに そこでバッファー回路の登場です。ハイインピーダンス出力の楽器を、 バッファーを通してローインピーダンス信号へ変換 してから音響機材へ繋ぐことで見違えるほどクリアでスッキリした音になります。そんなバッファとしての役割で最も有名なのが、DI(ダイレクトボックス)ではないでしょうか?録音卓で必ず使われるDIは、アンバランス信号をバランス信号へ変換する役割も担ってます。 現代のエフェクターのほとんどがバッファ内蔵 また現代のエフェクターのほとんどが、最初の入力段にハイインピーダンスを入力できるようなバッファー回路が設けられてます。逆に古いエフェクターではそれほど入力インピーダンスが高くなく、楽器によって音色変化が大きく違うなんてことがあります。以前作った Fuzz Face も入力インピーダンスが低くめなので、ギターやボリューム調整によって大きく音色が変わってしまいます。むしろそれが人気だったりしますでしょうか。そういったエフェクターに、通常のバッファー回路を挟んでしまうと今度は歪みすぎるといった事態になりますからなかなか難しい話です。 使うもの バッファー回路を作るにあたって、使うものをご紹介いたします。 NE5532 オペアンプ 2SK30A 2SK303 JFET ユニバーサル基板 9V電池ボックス モノラル標準ジャック オペアンプ5532 デュアルオペアンプの5532を使用します。5532は古くからあるオペアンプですが、高音質なのに低価格で手に入りやすく、今でもさまざまな音響機材で使われてます。 その他 その他に必要な電子部品は後述の回路図をご覧ください。 オペアンプ5532を使ったバッファーエフェクターの製作 回路図 下図は、オペアンプ5532を使ったギターやベースで使えるバッファーエフェクターの回路図です。画像をクリックすると拡大できます。 入力インピーダンスは入力段の2つの1MΩの抵抗並列合成なので、 500kΩ になります。出力インピーダンスはオペアンプなので 100Ω以下 になるようです。 FETの役割 最初にも触れた通り、5532の入力インピーダンスはギターを直で受けれるほど高くはありません。数百キロΩ程度だそうです。4558やTL072ではギター信号も直接受けれるのですが、5532の場合はちょっと厳しいです。そのため、 前段のFETでハイインピーダンスを5532でも受け取れるようにローインピーダンス信号に変換 してあげます。ここのFETには2SK303や2SK30Aなどが使用できます。ただし、FETのピン端子はG、D、Sの並びが統一されてないので配線にご注意ください。 ...

公開: 2020年11月9日 · 更新: 2026年4月26日 · Toshihiko Arai
【エフェクタ製作】原音とエフェクト音をミックスする「BLENDER」・ハンドメイドプロジェクト

【エフェクタ製作】原音とエフェクト音をミックスする「BLENDER」・ハンドメイドプロジェクト

はじめに この記事では、ギターやベースの原音とエフェクト音をミックスできる「BLENDER」という自作エフェクターの作り方や動作原理を紹介します。ファズ音に原音を足したいときや、リバーブ音と原音の割合を調整したいときに使う、ブレンド専用のペダルです。 この記事では、衝動的に作ったV1(バージョン1・冒頭の写真 2020年頃の製作)と、その後に作った改良版V2をまとめています。前半はV1の製作、後半はV2の回路と製作を読む構成です。 先に要点 BLENDERは原音と外部エフェクト音を混ぜるためのペダル V1は位相反転切り替えを持つ実験的な構成 V2は5532を使い、原音とエフェクト音の分離を重視 SEND先のエフェクターは入力インピーダンスが高い前提 ファズや空間系を原音に少し混ぜたいときに使いやすい 動画を再生 BLENDER(ブレンダー)エフェクターとは 改めてBLENDERのエフェクト機能をおさらいしておきます。下図は、この記事でご紹介するBLENDERの役割をイラストで表したものです。 BLENDERはエフェクターといっても、 BLENDER自体には積極的に音を変える機能は備わってません。 あくまで外部エフェクタと原音のミックス作業を行う音響機材です。 市販品だとBOSSのラインセレクターLS2が似たような機能を果たします。ただしLS2は外部エフェクタをA/Bの2チャンネルも繋げることができ、ミックス機能だけでなく、A/Bボックスの役割もある多機能なエフェクタです。原音とエフェクト音のブレンドというよりは、原音にAとBの音を足し算するといった使い方になります。 ここから紹介するBLENDERは、原音とエフェクト音のバランス調整に特化したよりシンプルなものです。 BLENDER V1 回路図 下図はBLENDER V1の回路です。オペアンプは4558を指定してますが、入力インピーダンスが数M以上のオペアンプと入れ替え可能です。たとえばTL072など。 BLENDER V1の回路では原音のミックスだけでなく、位相反転の機能も付けてあります。 エフェクターによっては位相が反転してしまうものがあります。その場合に、位相反転されたエフェクト音と原音をブレンドしてしまうと音が打ち消しあってスカスカなサウンドになってしまいます。そういった時に位相反転ができると便利というわけです。 回路の性質から原音ミックスだけでなく、パラレル出力として使ったり、バッファアンプとしてもご利用いただけます。 前段、バッファー回路 簡単に回路図の説明をしておきます。まず、前段のオペアンプはバッファ回路です。ギターのハイインピーダンス出力を受けることができるように、入力インピーダンスを500kΩになるように設計されてます。 位相反転回路 後段(下段)のオペアンプが位相反転機能を担ってます。反転増幅回路を使用した増幅率1倍のバッファ回路です。実際に組み立てるときは、非反転信号の「SEND NORMAL」と反転信号の「SEND INVERTED」をトグルスイッチで切り替えられるようにしました。 バランサー回路 BLENDERのブレンド機能を担うバランサー回路部分が下図です。 バッファー回路を通した原音(左側からの信号)と、エフェクターから返ってきたRETURN信号を100kBの可変抵抗でミックスさせてOUT出力としてます。 ただしこの回路の注意点として、SEND先のエフェクタ機材の入力インピーダンスが十分に高いことを想定してます。 そうでないと原音に影響してしまい、バランスボリュームがほとんど効かなくなるのでご注意ください。現代のエフェクタならほぼ問題はないかと思いますが、オールドエフェクタなどには入力インピーダンスが低いものが多く存在します。その場合には、BLENDERと送り先のエフェクタの間にバッファエフェクタをはさむと良いでしょう。 また、完全には原音とエフェクター音を切り分けることはできない回路設計です。ただしBLENDERの用途からして、そこまで厳密な要求はないものと考えてこれで良しとしました。原音とエフェクト音を完全に切り分けた改良版は、後半の記事のV2で解説いたします。 仮想GND(バイアス電源)回路 下図の回路は、9Vの単一電源でオペアンプを動作させるために作る仮想GNDです。9V電圧を10kΩの抵抗2つで分圧し、中間の電圧を仮想GND(バイアス)としてます。並列に入っているコンデンサは、バイアス電位を安定させるためのものです。 ...

公開: 2020年11月4日 · 更新: 2026年5月2日 · Toshihiko Arai
パッシブDI・ダイレクトボックスの製作〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その1

パッシブDI・ダイレクトボックスの製作〜究極のナチュラルサウンドを求めて、その1

はじめに 無電源で動く「パッシブDI・ダイレクトボックス」を作ってみました。サンスイのトランスST-14を使い、入力インピーダンス500kΩでギターやベースなどのパッシブPU信号を受けられるようにした製作記録です。 この記事では、DIの役割、ST-14の仕様、録音して分かった音の印象、バランス伝送がノイズに強い理由をまとめます。録音機材へ直接つなぐ前提なので、信号レベルが小さくなる点と、録音側で十分なゲインが必要になる点がポイントです。 DI(ダイレクトボックス)の役割 DIの役割は主に次の3つが挙げられます。 インピーダンスの高い楽器の出力をローインピーダンスへ変換 アンバランス信号をバランスアウトへ変換 機材間の接続を整理し、録音やPAへ信号を渡しやすくする ①は、ギターやベースなどのPU信号はハイインピーダンスため、そのまま録音機材へ繋ぐと高域が劣化したり、ノイズ発生してしまうといった問題が生じます。そこでローインピーダンスへ変換することで、音質をそのまま維持してノイズに強い信号になり、キレイに録音できるようになります。 ②は長いケーブルになった時にとくに重要で、バランス信号にすることでノイズに強くなります。このことは後ほど詳しく解説します。 他にも、録音機材とのグラウンドループをカットする機能だったり、録音機材とギターアンプへの信号を分岐する役割があったりします。ちなみにDIはダイレクト・インジェクションの略です。 パッシブDI ST-14の仕様 パッシブDI ST-14の仕様を解説します。ケースの中には、トランスが1つ入っているだけです。サンスイのインプットトランスとしてリリースされているST-14です。 ST-14 インピーダンス 巻線比 1次 500kΩ 22.4 2次 1kΩ 1 1次側が500kΩもあるのでこちらを入力とすれば、ギターやベースなどのハイインピーダンス信号を受けれます。また2次側を出力とし、1kΩの出力インピーダンスであれば、録音機材へそのまま接続できます。 参考に製作したパッシブDIの回路図を載せておきます。市販品のようにGNDオープンやAMPスルーアウト機能はありませんが、その分とてもコンパクトなDIを作ることができました。XLRコネクタに改造する場合は、HOTを2番にSLEEVEを3番に接続します。 ケースは小型アルミダイキャストを使用、サイズは約93×36×35mmです。安定のノイトリックのステレオフォーンジャックで入出力を実装しました。トランス鳴きが起こらないように、トランスは接着剤でシャーシに固定してあります。 パッシブDI ST-14の音色・特徴 パッシブDI ST-14の音色を比較した動画を公開してますのでご覧ください。 動画を再生 トランスを使ってしまうと「古臭い音」になると思っていましたが、そんなことはまったくありません。高域まで伸びており、非常に抜けの良いサウンドです。特にギターで使うと相性が良さそうです。ベースで使う場合には少し注意が必要で、というのもST-14の周波数特性が左肩下がりなので低音域が少し削られてしまいます。気になる方はアクティブDIを使いましょう。ソロベースとして使う分にはむしろこのパッシブDIがマッチします。 また、使用上の注意点があります。それは出力信号が小さいということです。ST-14では、巻線比が約22倍ですから電圧も1/22に減衰して信号が小さくなってしまいます。よって録音機材でゲインを稼がなければいけないのですが、実際録音してみると40dB以上は増幅しないと厳しいです。また録音機材によってはゲインをあげるとヒスノイズが目立ってしまうものがあるので、それなりのスペックが録音機材に要求されます。動画の録音ではZOOM H5を使って、ソフト側でノーマライズして音量を調整しました。ちなみにZOOM H5 の入力ゲインは55dBあります。 パッシブDI ST-14の音色・特徴をまとめます。 ギターやソロベースに最適! 録音機材で40dB以上増幅が必要 パッシブとアクティブの違い パッシブがあればアクティブもあります。パッシブとアクティブの違い、電池駆動か電池なしで駆動かの違いです。製品で有名なダイレクトボックスとして、カントリーマンのTYPE85や、BOSSのDI1が挙げられます。スタジオやライブハウスで、一度は見かけたこともあるのではないでしょうか?これらのダイレクトボックスは電池で駆動する、つまりアクティブ機材になります。ここで紹介するDIは電池なしで駆動するパッシブ機材です。 ...

公開: 2020年10月31日 · 更新: 2026年5月3日 · Toshihiko Arai
LM386で自作ヘッドホンアンプを作ってみた

LM386で自作ヘッドホンアンプを作ってみた

はじめに この記事では、LM386を使った自作ヘッドホンアンプの作り方をご紹介します。 LM386は、乾電池などの低電圧で動かせるオーディオのパワーアンプICです。ヘッドホンだけでなく、小型なスピーカーくらいならLM386で動かせちゃいます。少ないパーツでオーディオアンプを作ることができるので、電子工作初心者の方でも簡単に作れます。 LM386の名前が変わり、NJM386BDの名前で売られていることもあります。どちらも同じように扱えますのでご安心ください。この記事ではNJM386BDを使ってますが、あえてLM386と呼ぶことにしてます。 LM386 1W程度のスピーカーを鳴らすことができる高出力なアンプ「LM386」を使用します。ほんのわずかな部品でアンプ回路が実現できるので昔から人気のある素子です。ヘッドホンアンプとして使う場合は、ステレオですので2つ必要になります。 本記事では、回路の基板もエッチングで製作してます。 LM386でヘッドホンアンプの製作 それでは、オーディオアンプLM386を使った自作ヘッドホンアンプの作り方を説明していきます。 LM386の端子配列 まずは、 LM386の端子配列を確認します。 端子番号 記号 1 GAIN 2 -INPUT 3 +INPUT 4 GND 5 OUTPUT 6 V+ 7 BY PASS 8 GAIN 図のとおり、ひとつのLM386に増幅回路は1つしか含まれてません。ステレオヘッドホンアンプにするためには、LM386の素子が2つ必要になります。 今回のヘッドホンアンプでは、電源に9V電池を使用します。 また、LM386は1Wほどの出力が出ますので、小型なスピーカーなら十分に鳴らすことができます。 ヘッドホンアンプの回路図 こちらが今回つくったヘッドホンアンプの回路図です。 LM386のデータシートを参考に設計しました。画像をクリックすると拡大できます。 いくつか注意点を補足します。 まず、LM386の非反転入力(2番端子)は使わないのでGNDへ落とします。 また、カットオフ周波数を数Hz以下にしたいので、入力のカップリングコンデンサを10μF、出力のカップリングコンデンサを1000μに設定してます。 カップリングコンデンサの値が小さいと、オーディオ信号の低音がカットされてしまうので注意しましょう。 LM386の出力につながっている0.047μと10Ωは発振防止のために必要です。10Ωの抵抗には大きな電流が流れるので、1Wの抵抗を使用しました。 発振防止の回路は「ゾーベル・ネットワーク」と呼ばれるものです。スピーカーなどにおいて周波数が高くなるほどインピーダンスが肥大化し無限大となるため、その周波数帯域では負帰還量が多くなるため発振しやすくなるのだと思われます。ゾーベル・ネットワーク回路を入れることで高周波でのインピーダンスを下げ、発振を抑えられるようです。 ボリュームの可変抵抗は 10kΩAカーブ を使用してください。人間の聴覚に近い音量変化を行うには、リニアに変化するBカーブではダメで、対数変化するAカーブの可変抵抗が必要です。 ヘッドホンアンプの製作 回路図を元に、 カット基板 に書き込むための配線を設計します。実はパソコンを使わずに手作業で設計するのはこれがはじめてです。一発で配線を考えるのは至難の技ですので、失敗しながら少しずつ詰めてきます。基板に書き込むときはトレーシングペーパーを使うのですが、裏表が逆にならないように注意します。 トレーシングペーパーに書き込んだ配線図を元に、穴あけ部分にポンチなどで基板に印をつけ、ピンバイスで穴あけしました。ただ、このピンバイスの穴あけ作業が苦痛でたまりません。後の電子工作では、 PROXXONのミニルーター を使って穴あけを行うようになりました。このほうが断然ラクです。 銅を残す部分を レジストペン で描いていきます。レジストペンは、塗るというよりは盛る感じです。 腐食液やエッチング液 と呼ばれれる二酸化第二鉄液で、銅を腐食していきます。腐食液はすこし温めたほうが(35度〜40度)、銅の腐食がはやく済みます。 15分〜30分ほどで腐食が完了します。その後、基板を水洗いして 工業用アルコール でレジストペンのインクを取り除きます。 小さい部品からはんだ付けし、 バッテリーコネクタ や ステレオミニジャック を配線します。 ...

公開: 2019年6月22日 · 更新: 2026年3月19日 · Toshihiko Arai