デジタル信号におけるRCローパスフィルタ
はじめに

デジタル信号におけるRCローパスフィルタは次の式となる。
\[y_i=ax_i+(1-a)y_{i-1} \tag{1}\]
なぜこの式がRCローパスフィルタになるのか、ここで詳しく解説してみたいと思う。
アナログ回路のRCローパスフィルタ
話を分かりやすくするために、最初の回路図を少し変形させてみよう。

信号源を(E(t))とし、時間(t)によって信号の電圧は変化する。
抵抗(R)に流れる電流は(I(t))なので、抵抗の両端にかかる電圧は(RI(t))である。また、コンデンサの電圧は(Ec(t))とすると、(Ec(t)=)が成り立つ。
よって、キルヒホッフの法則より、
\[E(t)=RI(t)+\frac{q(t)}{C} \tag{2}\]
となる。
また、ある時間における電流(I(t))はコンデンサの電気量(q)の変化量であるから
\[I(t)=\frac{dq(t)}{dt} \tag{3}\]
で表せる。 ここでポイントなのは、図のOUT端子(抵抗とコンデンサの間)へ接続される負荷はハイインピーダンスであるため、出力端子へほとんど電流が流れていかないものとしている。
式3を式2へ代入すると、
\[E(t)=R\frac{dq(t)}{dt}+\frac{q(t)}{C}\tag{4}\]
となる。
コンデンサの電圧は(CE_c(t)=q(t))なので
\[E_c(t)=\frac{q(t)}{C}\tag{5}\]
である。式5を式4へ代入すると、
\[RC\frac{dE_c(t)}{dt}+E_c(t)=E(t)\tag{6}\]
である。
電圧をデジタルデータで考える
ここで、電圧をデジタルのサンプリングデータとして考えると(x_i=E(t))、(y_i=E_c(t))で置き換えることができる。

よって、式6は次のようになる。ただし(ΔT)はサンプリング周期である。
\[RC\frac{y_i-y_{i-1}}{ΔT}+y_i=x_i\tag{7}\]
これを(y_i)について解くと、
\[y_i=\frac{ΔT}{RC+ΔT}x_i+\frac{RC}{RC+ΔT}y_{i-1}\tag{8}\]
となる。 また、
\[\frac{RC}{RC+ΔT}=\frac{ΔT-ΔT+RC}{RC+ΔT}=\frac{RC+ΔT}{RC+ΔT}-\frac{ΔT}{RC+ΔT}\]
なので、ここで(a=)とおけば、式8は
\[y_i=ax_i+(1-a)y_{i-1}\tag{9}\]
となり、デジタル信号におけるRCローパスフィルタが導き出された。
カットオフ周波数
最後にカットオフ周波数と(a)の関係を導き出してみよう。
係数(a)は、
\[a=\frac{ΔT}{RC+ΔT}\tag{10}\]
であった。 また、RC回路におけるカットオフ周波数(f_c)は次式で求められる。
\[f_c=\frac{1}{2πRC}\tag{11}\]
これを展開すると、
\[RC=\frac{1}{2πf_c}\tag{12}\]
となる。式12を式10へ代入して計算すれば、
\[a=\frac{2πΔTf_c}{2πΔTf_c+1}\tag{13}\]
の関係が導き出される。