ECMで作る自作マイクへの道

著者画像
Toshihiko Arai
(更新:2023年1月10日)

この記事は数年にわたって取り組んだ、ECMを使った自作マイク制作の様子をまとめたものになります。

①ECM(エレクトレットコンデンサマイク)の使い方

はじめに、この記事でつかうものをご紹介します。

ECMカプセル

今回使用したECMは、秋月電子通商で購入したWM-61A相当品です。

WM-61Aとは

WM-61Aとは、昔パナソニックが製造していたECMでして、音質に定評があることで有名です。残念ながらすでに廃盤となってしまったので、私が使ったのはあくまでWM-61A相当品になります。 基本、ECMの使い方はどれも同じですので、他のECMでもこの記事のやり方が参考になります。

WM-61A相当品は、通常のECMよりも小型です。しかし、その大きさからは想像できないほどの、迫力のある音質です。

WM-61A相当品、小型なECMだが迫力のある音にびっくり!

その他の電子部品

その他に、固定抵抗と電解コンデンサを使用します。 2.2kΩの抵抗があればベストです。コンデンサは22uF程度の電解コンデンサで良いです。

ECMとは

ECMとは、エレクトレットコンデンサーマイクのことです。 コンデンサマイクと同様に、2枚の電極版の片方が振動することによって、音を電気信号として取り出すことができます。 ただし、ふつうのコンデンサマイクと違うのは、エレクトレットというあらかじめ電気を帯びている素子が使われていることです。これによって、ふつうのコンデンサマイクのように外部から電圧を加えて誘電分極を起こさせる必要がありません。そのため小型化が可能で、スマホやイヤホンをはじめ、小型機器のマイクとして広く使われてます。 また、ECMには通常トランジスタが内蔵されてますから、実際は外部電源が必要になります。

ECMカプセルの構造

ECMカプセルの中身の構造はふつう次のようになってます。

ECMの内部構造

FETの役割

ECMの銀色のカプセルの中には、マイクユニットだけでなくFETが内蔵されてます。FETは、マイクユニットから発生した超微弱電流を大きくする役割をもってます。 ようするに、信号の出力インピーダンスを低くし、外来ノイズの影響を受けにくくする働きをします。

ECMの回路図例

実際にECMを使うには、次のような回路を組みます。 ECMの基本回路図

このような定数で設定してみました。

名称
+Vs 1.2V
RL 3.3k
C 22μF

ECMの供給電圧

最初にも説明しましたとおり、ECMの内部にはFETが入ってますので、外部電源を供給しなければなりません。

今回使うECMは、1.1〜10Vの電圧範囲で動作が可能でして、標準電圧が2.0Vです。つまり、電池一本でも動かせるということです。

ECMの極性

ECMの端子には、プラスとマイナスの極性があります。マイナスは、よく見るとアルミカプセルと同じGNDに落とされてます。どちらがプラスかマイナスかわからなくなった場合は、テスターでアルミカプセルと端子を導通させてみて、ショートするほうがマイナス端子と判断しましょう。

負荷抵抗RL

ECMへ電源供給する際のRLの負荷抵抗は、2.2kΩが標準のようです。手持ちの抵抗の都合上3.3kΩとしましたが問題ないです。 実際いろいろな抵抗を試してきて、1kΩ〜10kΩの範囲で使用できました。抵抗値を小さくすれば出力が大きくなり、抵抗値を大きくすると出力は小さくなります。

カップリングコンデンサC

コンデンサーCは、いわゆるカップリングコンデンサになります。 カップリングコンデンサの役割は、信号のような交流ACと、供給電圧のような直流DC成分を分けることにあります。 カップリングコンデンサの値の決め方は、その先につなぐ機材の入力インピーダンスを考えなければなりません。とはいえ、マイク入力などにつなぐでしょうから、入力インピーダンスを600Ω以上と考えればよさそうです。入力インピーダンスを600Ωと想定して、22μFではカットオフ周波数は12Hzになります。

カットオフ周波数とは

カットオフ周波数とは、ローパスフィルタやハイパスフィルタにおいて「カットオフ周波数以下または以上の周波数がどんどん通りにくくなる」というような意味です。 正確には、一次フィルタで、-6dB下がった地点の周波数を「カットオフ周波数」と呼びます。

一次RCフィルタ回路におけるカットオフ周波数は、次の式で計算できます。

\[ fc = \frac{1}{2πCR} \]

ブレッドボードで扱いやすくするために、ECMをモジュール化してみました。このような少ない部品の回路でも、モジュール化しておくと後々使い回しが効き、精神衛生的にもよいです。

ECMマイクモジュール

音質は?

WM-61A相当品のECMの音質の感想です。 音は落ち着いた音色で、パワフルな印象があります。色々なECMと比較してみても、WM-61A系は特徴的な感じがします。

ECMを本格的に高音質で使いたい場合は、ぜひファンタム電源化してみましょう。

発展

動画で紹介したようにこのECMモジュールを使って、Raspberry Piで音センサにして遊んでみました。

ECMをイヤホンに埋め込んで、ASMRのバイノーラルマイクを作ってみても面白そうです。

▼ 下記動画ではこの記事で紹介するECMを使って、Raspberry Piでサウンドレベルインジケーターを実現しました!

②パソコンで使える!3極端子のECMピンマイクの作り方

パソコンで使える3極端子のECMピンマイクの作り方をご紹介いたします。紹介するマイクの特徴は次のとおりです。

パソコンやスマホなどに採用されている3.5mmイヤホンジャックの規格は、通常4極タイプのものが主流です。4極タイプのものは通常、ステレオ出力とマイク入力、それにGNDのために配線されてます。 その中でもスマホではCTIA規格とOMTP規格が混在しており、マイクとGND端子が逆になっているものがあります。iPhoneをはじめとするスマートフォンのほとんどはCTIA規格ですが、一部の機種ではOMTP規格であるため注意が必要です。

ヘッドホン・マイク分岐ケーブル

3極端子のマイク制作にあたって、次のようなヘッドホン・マイク分岐ケーブルが必要になります。

イヤホンジャックのあるスマホや、MacBookなどのノートパソコンでつかうことができます。イヤホンジャックのないiPhoneでも、Lightningイヤホン変換アダプタを使えば利用できます。

ECM(エレクトレットコンデンサマイク)

ピンマイクやモバイル機器に使われるマイクロフォンのほとんどは、ECMというコンデンサマイクです。小型化できて扱いやすく、音質もそこそこ良いです。ECMには様々な種類がありますが、今回は音質に定評のあるWM-61A相当品を使用しました。秋月電子通商さんで購入できます。

その他

その他に3.5mmの3極端子オス、2芯ケーブル、銅箔、熱収縮チューブなどを使用しました。

3極端子のマイクって?

さて、マイク信号なのに3極って不思議と思われます。3極タイプのマイクはスマホやパソコンのイヤホンジャックへ直接挿すことはできません。必ずスピーカーとマイクを分岐するアダプタが必要となります。

3極端子のマイクジャックは、次のような構成になってます。

T (Tip) R (Ring)
MIC MIC
3極ジャックTRS

MIC端子が二つもあってステレオなの?と思いましたが違います。二つのMIC端子はアダプタ内でショートしており、MIC端子は同じ信号を意味します。そのため、2極のモノラル端子だと構造上、MICとGNDがショートしてしまいます。ですから自作する場合は、3極のステレオミニジャックが必要になります。

ECM選び

ところでECMカプセルには様々なモノが売られてます。基本的にECMカプセルは安いのですが、ちょっと高いものもあります。こちらのWM-61Aは2つで1500円近くします。実は、WM-61Aとは以前にパナソニックが製造していたECMカプセルでして、音質に定評がありネット界隈でになっていました。しかし残念ながら製造が中止されてしまったため、市場になかなか出回らなくなってしまいました。そういうわけもあって少し割高になってます。

秋月電子通商でWM-61A相当品なるものが販売されてますので、それを使いました。パナソニックのWM-61Aの音質とどれほど違うのかはわかりませんが、他のECMと比べるとパワフルな印象がありました。また直径が5mm程度で、他のECMより約半分ほどの小ささです。

他にも一般的なECMであればこの記事の内容で動作します。ECMを変えて音質の違いを確かめてみるのも面白いです。

外部マイクとプラグインパワー

スマホやパソコンで外部マイクとして認識させるためには、ちょっとした工夫が必要になります。それは、MICとGNDの間に数kΩ(1kΩ〜8kΩ)程度の負荷がかかると外部マイクが認識するようです。詳しくはこちらの記事がとても参考になります。

MIC端子とGNDの間に6.8kΩの抵抗をつないでみたところ、手持ちのスマホでは外部マイクとして認識されました。その時、6.8kΩの両端に2V程度の電圧が掛かっていました。これはプラグインパワーと言って、外部マイクなどに電源を供給できる便利な仕組みです。本来はECMを動かすには別途電池が必要でしたが、プラグインパワーを利用すれば外部電源を必要とせずにECMを利用することが出来ます。

下図は自作マイクの回路図例です。6.8kΩの抵抗をECMと並列にはさんでいますが、この抵抗はなくても動作します。2.2kΩの抵抗はECMへの電源供給の抵抗になります。この抵抗の値を変えると、ECMの出力の大きさも変わります。音量が大きすぎると思ったときは、2.2kΩの抵抗を少し大きくしてみてください。

プロトタイプ版自作マイクの回路図

ヘッドホンも使える3極の自作マイクの完成

先ほどの回路図内の6.8kΩを省略し、2.2kΩの抵抗を1kΩに変更して、3極端子の自作マイクを作ってみました。ヘッドホンを繋いで音声通話が可能になりました。

自作マイクの完成

気になる音質ですが、こちらの動画でご参考いただけます。ただし、動画の音声は4極端子版です。といっても、ここで作ったマイクとほとんど違いがありません。

スマホの内蔵マイクは、環境音を拾いやすく、高音がシャリシャリしていて少しうるさい印象でした。また、スマホのボディの共振によるためでしょうか?水中や金属箱の中にいるような音質が気になります。一方で、自作マイクは非常にフラットな音質です。プロっぽい録音感といえば良いでしょうか?なかなか良い感じです。

自作マイクを作るのに自信がない方は、素直に製品のマイクを選びましょう。低価格でも完成度の高い製品が買えますから、おすすめです。

音質をグレードアップ

実はここまで紹介したプラグインパワーによる方法は、ECMの性能を十分に発揮できません。プラグインパワーで供給される電圧は低すぎるからです。ECMの性能をフル発揮させると高音質で録音できます。その場合はぜひ、ファンタム電源で動かしてみましょう!

また、ピンマイクを外で使う場合には、風切り音のノイズ対策も必要になります。ウィンドジャマーというモフモフをマイクに被せることで、驚くほど嫌な風のノイズを除去できます。

③スマホで使える!自作ECMピンマイクの作り方

YouTube動画撮影やライブ配信などで使える、スマホ用のピンマイク(ラベリアマイク)を制作してみました。ECM(エレクトレットコンデンサマイク)をスマホからの電源供給で動かすプラグインパワー方式になります。端子は4極端子で、iPhoneなどの普及しているCTIA規格です。ここで紹介する自作マイクは次のような特徴となります。

ECMはコンデンサマイクの一種ですので通常は電源供給が必要になります。通常スマートフォンでは、イヤホンジャックからマイクへ電源供給できるプラグイン方式を使うことができます。本記事でも、スマホのからECMへ電源供給できる回路図をご紹介いたします。

ピンマイクはAmazonなどでも安く売られてますが、自作することで製品にはない音質の良さが期待できます。決して難しくはないので、ぜひ自作マイクにチャレンジしてみてください。

ECM(エレクトレットコンデンサマイク)

ピンマイクやモバイル機器に使われるマイクロフォンのほとんどは、ECMというコンデンサマイクです。小型化できて扱いやすく、音質もそこそこ良いです。ECMには様々な種類がありますが、今回は音質に定評のあるWM-61A相当品を使用しました。秋月電子通商さんで購入できます。

その他

その他に3.5mmの4極端子オス、2芯ケーブル、銅箔、熱収縮チューブなどを使用しました。

4極端子のイヤホンジャックを想定したスマホ用のマイクを想定してます。イヤホンジャックがないiPhoneではライトニングからイヤホンジャックへ変換するアダプタが必要になりますのでご了承ください。

CTIA規格とOMTP規格

スマホの4極のイヤホンプラグには、CTIA規格とOMTP規格が混在してます。CTIA規格とOMTP規格では、マイク信号ととGNDの配線が異なります。iPhoneはじめ、ほとんどのスマホはCTIA規格ですので、ここでもCTIA規格で制作しました。

規格 T R R S
CTIA L R GND MIC
OMTP L R MIC GND
4極ジャックTRRS

回路図

次の図は、今回制作した自作ピンマイクの回路図になります。ECMと4極端子、それに抵抗1つでプラグインパワーの外部マイクロホンが実現できます。

プラグインパワー方式のスマホ外部マイクの回路図

ECMの種類によって感度が違うため、実際に作ってみると音量にムラがあります。秋月電子通商さんで入手できるWM-61A相当品ですと、抵抗値を2.2kΩにするとちょう使いやすい音量でした。抵抗値は、好みの音量に合わせて2kΩ〜9kΩの範囲で調整いただけます。抵抗値が低すぎたり大きすぎたりすると、スマホ側で外部マイクと認識しないのでご注意ください。

制作の様子

次の写真は、実際にピンマイクを制作している様子です。ECM周りを銅箔でシールドすることでノイズ対策を施してます。接着剤はできるだけ使わず、熱収縮チューブを活用して固定すると良いです。

自作ピンマイクの制作の様子自作ピンマイクの制作の様子自作ピンマイクの制作の様子

ピンマイクですので、外で収録することもあるでしょう。その際に風が吹いていると、ボーボーといった風切り音が気になります。そういった場合は、ピンマイクにモフモフしたウインドジャマーを被せることで、風のノイズを抑えることができます。ウインドジャマーは、ユザワヤなどで売られているフェイクファーを使って自作もできます。

④マイクの風切り音対策「ウインドジャマー」の作り方

▼ 自作のウインドジャマーの威力をご覧ください。

ウインドジャマーとは

ウインドジャマーとは、マイクの風切り音を軽減するための、マイクにかぶせる毛皮みたいなやつです。

野外での収録には定番のアイテムであります。

風切り音とは

風切り音とは、野外での撮影のときに誰もがなやまされる、「ボーーーー」とか「ゴーーーー」といった風のノイズです。iPhoneだろうが、ピンマイクだろうが、ガンマイクだろうが、風切り音の対策をおこなっていないと容赦なく風の不快なノイズが入ってきます。映像がよくても音声が悪いと、せっかくの作品が台なしになってしまいます。

それでは、マイクの風切音対策で使えるウィンドジャマーの作り方をご紹介します。

素材

ウィンドジャマーの素材には毛むくじゃらのフェイクファーを使います。ユザワヤでみつけた、ピンマイクにちょうど良さそうな「エコファーボール」を使いました。

ユザワヤのエコファーボール

エコファーボールは100円程度でした。色も選べますので、カラフルなウィンドジャマーを作ることもできます。

加工

さて、ユザワヤのエコファーボールは、真ん中にスポンジが入ってます。ハサミでエコファーボールに切り込みを入れ、スポンジを取り除き、適当なサイズにカットして丸くなるように縫い直せばウィンドジャマーの完成です。

自作ウィンドジャマーをピンマイクに装着

見た目を気にしないのであればこんなもので十分ですが、もっとカッコよくしたい場合は素直に製品を購入しましょう(笑)こちらのCOMICAのウィンドジャマーは安いわりに質が良くておすすめです。

フェイクファー以外の素材

毛皮のフェイクファーじゃなきゃダメなの?と思って、他にもフェルトや綿、ストッキング、スポンジなどを試してみました。しかし、どれも毛皮ほどの風防効果はありません。不思議なもので、風を除けるには動物の毛に似た構造が大切なようです。

マイクの選び方

マイクの選び方をお伝えします。

声の録音

「声」を録音するのであれば、ピンマイク(ラベリアマイク)を使うとよいです。ウインドジャマーを簡単に取り付けられますし、口とマイクの距離が近いほど、音質もクリアになります。

私は、iPhoneやAndroidのスマホでつかえる4極端子のピンマイクを使ってます。また、マイクの自作も可能です。

環境音の録音

環境音の録音でしたら、指向性マイクが使いやすいです。 こちらは超指向性のガンマイクです。ガンマイクは、狙った対象物を集音するのに向いていて、それ以外の周囲の環境ノイズをキャンセルできます。

2つのマイクの角度を自由に動かせますので、ステレオマイクにしたり、前後に向けて、自分声と相手の声を集音といった使い方ができます。ウィンドジャマーも付属しているので野外の録音に便利そうです。

ウインドジャマー「あり」「なし」でどれだけ違うのか

冒頭で紹介した動画です。もしもまだご覧になられてない方は、ウインドジャマー「あり」「なし」でどれだけ風のノイズが違うかご確認ください。

検証の結果

動画では、自作ウィンドジャマーをマイクに装着して扇風機で風を当ててみました。ヘッドホンやイヤホンで視聴するとウインドジャマーの風切り音除去する効果のスゴさを実感いただけます。 スポンジでは、完全には風切り音を除去できません。しかし、ウインドジャマーですと見事に風切り音がなくなります。かなりの強風でもノイズの除去ができますので、ウインドジャマーの効果は絶大です。

ウィンドジャマーの名前の由来

ところでなんでウィンドジャマーって名前なんでしょう? 不思議に思って調べてみました。

Wikipedia によれば、ウィンドジャマー(Windjammer)はなんと、貨物用帆船らしいです。19世紀後半から20世紀前半ごろまで使われてたそうな。帆船なのでマスト(帆)で風を受けて進むアレです。

ポーランドのウィンドジャマー(Wikipediaより)

蒸気船の安定度には敵わないものの、ウィンドジャマーは1950年代まで活躍し、商業的貨物輸送に最後まで利用された帆船らしいです。

なので、マイクの風切り音に使われるウィンドジャマーも、この帆船のように風を吸収するイメージで命名されたのでしょうか?

ウインドジャマーの周波数特性

さて、ここからは音響に関するかなりマニアックな話題になります。ウィンドジャマーなどの風防による周波数特性の違いを調べてみました。

スピーカーからホワイトノイズ音源を流します。その音を、次の3パターンで録音します。

  1. マイクに何もつけない場合
  2. スポンジのウィンドスクリーンをつけた場合
  3. ウィンドジャマーをつけた場合

最後に、録音した音の周波数特性を解析します。これらの実験を、風がある時とない時でくり返しましてみました。

実験結果:風がない時

こちらは、風がない時の周波数特性のようすです。スピーカーやマイク、部屋の環境により、理想的なホワイトノイズの周波数特性にはなりませんが、一番上のグラフを基準として比較します。

ホワイトノイズの周波数特性

スポンジをつけた時とつけてない時では、ほとんど周波数特性に違いがありません。しかし、ウィンドジャマーを付けた場合、高音域が減衰し、右肩下がりのグラフになってます。つまり、ウィンドジャマーを通すと若干こもった音になってしまうのです。また、ウィンドジャマーでは100Hz以下の低音域が盛り上がるのも気になります。

実験結果:風がある時

次に、風をマイクに送った状態で、同じ実験をしました。こちらがその時の周波数特性のようすです。 ホワイトノイズ + 風切り音の周波数特性

フィルターなしの場合

フィルターなしの場合では、1kHz以下の低音域が山のように盛り上がってしまいました。グラフからわかる通り、風切り音のノイズ成分のほとんどは低周波なんですね。

スポンジの場合

次にスポンジをつけた場合です。左の音圧のdB値を読むとわかりやすいのですが、フィルターなしの場合は最大音圧が0dBあたりまで膨らんでいるのに対し、スポンジをつけた場合は、-7dB程度に抑えられてます。つまり、風のノイズ音を除去できていることになります。

ウインドジャマーの場合

同様にして、ウィンドジャマーのグラフを見てみます。なんと、ピークが、-18dBまで抑えられていて圧倒的です。最初に紹介した実験動画からもわかる通り、ウィンドジャマーの風切り音除去効果は絶大なわけです。

ローカットフィルタ

マイクの録音時にローカットフィルタ(ハイパスフィルタ)を通すことで、さらに風切り音を減らすことができます。ミキサー卓やPA用マイクには大抵はローカットフィルタが付いているので、それらを活用すると良いです。

おすすめの録音機材

▼ ZOOMのハンディレコーダにはローカットフィルタ機能が装備されてます。単3電池一本で約10時間の連続録音が可能とのことですので、野外での集音に便利そうです。ちなみに私は、ZOOMのH5ハンディレコーダを使ってます。

ローカットフィルタがない場合

一方、スマホなどの簡易的な装備で収録する場合はローカットフィルタ機能がありません。ですから、収録後にDTMなどの音楽編集ソフトでローカットフィルタをかける方法で対処します。50Hz〜100Hzの間でカットオフ周波数を決めて、-6dB/oct、または、-12dB/octでカットすれば、自然な具合で低音域の雑音を除去できるでしょう。

その後の実験で、ユザワヤのエコファーボールより、製品のウィンドジャマーのほうが高音域の劣化を防げることが分かりました(その分、風切り音は若干拾ってしまうのですが)。現在は、こちらのCOMICAのウィンドジャマーを使用してます。

⑤ECMをファンタム電源で動かす!

ECM(エレクトレットコンデンサマイク)は、ひとつ数十円から数百円程度で手に入る高音質なコンデンサマイクです。小型な形状のなので、ラベリアマイク(ピンマイク)やモバイル端末でよく使われてます。

ECMを実際に使うときは、下図のように外部から電圧を供給して使います。ECMの種類にもよりますがECMの両端にかかる電圧は、1V〜10V程度の範囲になるように+VsとRLを設計します。

ECMの基本回路図

低電圧でも駆動できるため、スマホのイヤホンジャックから供給されるプラグインパワー(約2V)で動かすことができます。

プラグインパワーとファンタム電源の音質比較

プラグインパワーでのマイク制作は、使うのも作るのも簡単で便利です。しかし、プラグインパワーの電圧はわずか2V程度です。実は低い電源電圧ですと、ECMの性能をフルで発揮しきれません。つまり、プラグインパワー駆動のECMは音が悪いというのが、経験上の認識です。ECMの耐圧に注意しながら、ギリギリの10V程度の電圧でECMを駆動してみてください。高域が立ち上がり、驚くほどクリアなサウンドになります。実際に音質比較した動画を収録しましたのでぜひ、ご覧ください。

それでは、ECMを+48のファンタム電源で駆動させる方法をご紹介します。これから紹介する内容は、こちらの記事を大いに参考させていただきました。

ECMのファンタム電源供給回路

ECMをファンタム電源で駆動させるためには、次のような回路で実現可能です。ただし、この回路はアンバランス出力であることにご注意ください。

図❶ ECM(WM-61A)のファンタム電源供給(アンバランス)回路図 図❶ ECM(EC-H600)のファンタム電源供給(アンバランス)回路図

「アンバランス出力だとノイズ拾いやすいんじゃないの?」と思いますが、シールド対策をしっかり行えばほとんど問題ありません。とくにECMカプセルの部分のシールド対策が重要になります。シールド対策のやり方は後半で解説します。 そもそも、シールド対策をしっかりしていないのに、いくらバランス出力してもノイズを拾ってしまいます。また、今回紹介する回路図は、ご覧の通り部品数がとても少なくて済みます。コンパクトさとシンプルさにおいて、これ以上の回路は存在しないでしょう。 どうしてもバランス出力のマイクが良い方は、参考になりそうな回路を作ったので記事の最後でご紹介いたします。

さて、図❶は「正極側が正相となるエレクトレットマイク」のための回路図になります。一方で「バックエレクトレット方式のECMは負極側が正相」です。バックエレクトレットECMを使う場合は、次の回路図を参考にしてください。

バックエレクトレット型ECMのファンタム電源供給回路

図❷ バックエレクトレット型ECMのファンタム電源供給(アンバランス)回路図

図❶も図❷もほとんど同じ回路図ですが、HOTとCOLDの位置が異なります。これらの位相の問題はとても重要で、複数マイクを使ったときにそれぞれのマイクの位相が合ってないと、大きなトラブルの原因になります。少しややこしいですが、お使いになるECMの位相をデータシートなどでよく確認してください。

回路図の解説

それでは回路図の解説を行います。 回路図のRの値は、ECM端子間が10V程度になるように設定します。秋月電子通商で手に入るWM-61A相当品の場合ですと、47kΩの抵抗を使うと約10Vに設定できます。 カップリングコンデンサは、出力先の入力インピーダンスが600Ωまでを考えて10uFに設定しました。このときカットオフ周波数は26.5Hzになります。また、ファンタム電源は48Vですので、50V以上の耐圧のコンデンサを使うようにしてください。

フォーリーフのEB-H600を使う場合は、バックエレクトレット型のECMですので図❷の回路図で組みます。ECM端子間が10V程度になるようにRを設定すると、150kΩほどの抵抗が必要になります。 この記事ではフォーリーフのEB-H600を使って、ファンタム電源供給のピンマイクを作っていきます。フォーリーフのECMは秋月電子通商で購入できます。 フォーリーフのEB-H600とEC-H600 EB-H600はバックエレクトレット型ですが、EC-H600は通常のエレクトレット型になりますのでご注意ください。詳しくはフォーリーフのサイトでデータシートをご確認ください。

もちろん位相の問題と抵抗Rを適切に設定すれば、他のECMでも同じように制作できるはずです。

音響機材について

当然ですが、本記事で制作するマイクを使うには、ファンタム電源を供給できる音響機材がないといけません。私は、ZOOMのH5というハンディレコーダを使ってます。自転車配信の際に自作のピンマイクを使いますので、H5を自転車のトップチューブにマウントしてます。台座は3Dプリンタで自作です。また、スポンジを中間にはさんで振動吸収対策してます。さらに、マジックテープで脱着できるようにH5の底を改造してます。

ZOOMのH5を自転車にマウント

3Dプリンタで土台を制作バッテリーをマウントH5をマウント

このZOOM H5は、2chのXLRコネクタを装備しており、ファンタム電源供給が可能です。ローカットフィルタやリミッター、コンプレッサーといった機能も備わってます。また、オーディオインターフェースになることも可能で、スマートフォンに接続してライブ配信機材としても使えますのでおすすめです!

ファンタム供給ECMピンマイクのつくり方

それでは実際に、EB-H600を使ってファンタム供給できるECMピンマイクを作ります。

マイクケーブルとECMをはんだ付けし、φ2mmの熱収縮チューブで絶縁します。 マイクケーブルとECMをはんだ付け、熱収縮チューブで絶縁 マイクケーブルは、秋葉原のTOMOCA電気で購入した、モガミのφ約3mmの2芯ケーブルを使用しました。ほどよい柔らかさと耐久性を備えていて、ピンマイクにピッタリのケーブルです。

次に、ECMカプセルを絶縁するために、φ7mmの熱収縮チューブをかぶせます。ECMの負極とアルミカプセル導通しているため、シールド用の銅箔を被せるには絶縁が必要になります。

ECMカプセルを絶縁

銅箔でマイクを覆い、マイクケーブルのシールドの撚り線と接触させます。

銅箔とシールドを導通させる

このようにしっかりECMの周りをGND電位に落とし、シールドします。

銅箔で覆う

さらに、φ7mmの熱収縮チューブで銅箔が動かないようにします。

銅箔が動かないようにする

XLRコネクタの加工

次に、XLRコネクタ側の作業になります。回路図の通り、抵抗とコンデンサを間違えないように配線しましょう。

抵抗とコンデンサの配線

マイクケーブルが細すぎるので、スーパーXを根本に充填して固定しました。また、根本にも熱収縮チューブを少しまいて、マイクの色と合わせて識別しやすいようにしました。

XLRコネクタ

こんな感じで、EB-H600を使った2つのピンマイクをつくってみました。

ファンタム電源供給のピンマイクの完成

2つマイクを使えば、LRのステレオ収録にしたり、モノミックスで音量バランスを整えたりできます。左右の襟にそれぞれのピンマイクを付けて、自転車配信で遊んでみます。

【おまけ】アンバランス・バランス変換ボックス

実は山水のST-71のトランスを使って、バランス出力のピンマイクも作りました。しかし、アンバランス・バランス変換ボックスが少し大きいため、自転車配信の現場では使いづらくお蔵入りになってしまいました。先に説明したとおり、マイクカプセル部分のシールドをしっかり施せば、アンバランス回路でも滅多なノイズを拾うことはありません。とはいえ、せっかく作ったアンバランス・バランス変換ボックスなので、この記事で紹介します。

こちらがその回路図です。バックエレクトレット型のEB-H600を使うために設計したものですので、通常のECMを使う場合はトランスの3番と5番を逆にしてください。

ECMバランス出力の回路図

RLの値はECMの両端電圧が10V程度になるように設計してください。 600Ωトランスの高負荷をドライブするために、5532のようなオペアンプが必要です。

個人的にはオペアンプに2114を使うのがおすすめです。5532よりもクリアな音質で、MUSE01と引けを取りませんでした。そして値段も安いので、2114が手に入るようでしたらぜひ試してみてください。

下の写真のように3Dプリンタ作ったケースに入れてみました。その後、ケースのシールド対策としてアルミテープを貼ってます。また、ECMはステレオミニ化して入れ替えられるようにしてます。

アンバランス・バランス変換ボックス

▼ ケースのモデルはThingiverseで公開してます。

⑥Can☆Doのピンマイクを改造してみた!音量アップ、高音質化できるか!?

CanDoのピンマイクを音量アップ、高音質化できるか改造に挑戦してみました。WM-61A相当品で作ったピンマイクとの音質比較もします。

わずか100円で変えてしまうピンマイク、Can☆Doへの感謝の気持ちを抱かずにはいられません。ありがとうございます!

しかし実際にiPhoneでアダプタ経由で使ってみると、音量が小さすぎて使い物になりませんでした。 ピンマイクに関しては私もここ数年間、自作を積み重ねてきたので、ある程度知識はあります。ですから今回は、Can☆Doのピンマイクを解体して、自分なりのピンマイクに改造(モディファイ)してみました。改造前と改造後の音質比較した動画をYouTubeで公開してますので、ぜひご覧ください。WM-61A相当品の自作ピンマイクとも音質の違いを比較してます。

Can☆Doのピンマイクの分解

Can☆Doさんで購入した、こちらのピンマイクを改造していきます。4極端子で、スマホの外部マイクとして認識できるものです。

Can☆Doのピンマイク

ウインドスクリーンを取るとこんな感じです。

Can☆Doのピンマイク

結構簡単に分解できます。ECMはWM-61A相当品よりも少し細長いですね。指向性を出しそうな、ピンマイクの筐体です。ただし、網メッシュは金属ではないようなのでシールド効果はありませんでした。つまり、このままだとハムノイズに弱いです。

Can☆Doのピンマイクの分解

Can☆Doのピンマイク改造後の回路図

今回は、Can☆DoのピンマイクのECMカプセルだけを使うことにしました。マイクケーブルや、4極端子は秋葉原で調達したものを使います。

組み立てる回路図は次の通りです。スマホのイヤホンジャックから電圧供給できるプラグインパワー方式です。ただしCTIA規格ですので、一部のスマホだと外部マイクとして認識しない可能性はあります。

改造後の回路図

Can☆Doのピンマイク改造の様子

抵抗はイヤホンジャック側に埋め込みます。CTIA規格ですので、スリーブがマイク信号になります。間違えないように配線しましょう。

Can☆Doのピンマイク改造の様子

ECM周りは、銅箔を使ったシールド対策を施しました。これでハムノイズはばっちり消えます。筐体を使うことで共振周波数の影響が出てしまうとは思いますが、音声を収録する上では気になりません。

Can☆Doのピンマイク改造の様子Can☆Doのピンマイク改造の様子Can☆Doのピンマイク改造の様子

Can☆Doのピンマイク改造後の音量、音質は?

音量はばっちりアップしまして改善されました。プラグインパワーの場合は、抵抗値を1kΩ〜9kΩ当たりまで変えることで音量の調整が可能なはずです。気になる音質ですが、WM-61Aと比較すると高域が落ちて少し暗い音ですね。考えようによっては落ち着いた音質と言えましょうか。何はともあれ、100円で十分楽しく遊ばしてもらいました。近年の100円ショップさんのアイデアや、電子製品には毎回刺激を受けてます。これからも、面白い商品を安く提供いただけることを楽しみにしております^^

Amazonで探す