STEINBERGER BASSの改造〜塗装はがし・研磨・再塗装

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Toshihiko Arai
(更新:2023年5月17日(水))

塗装剥がしするベース、STEINBERGER BASS (Spirit)

STEINBERGER BASSの改造 エピソード1〜塗装はがし

スタインバーガーのベースを改造すべく、まずは塗装剥がしを行なってみました。主に剥離剤を使った方法で塗装を剥がしていきます。その様子を忘備録として残します。

STEINBERGER BASS (Spirit)

YouTube動画でも度々登場しているスタインバーガーのこちらのベースを塗装剥がししてきます。

Amazonで購入できる低価格帯のものですが、作りはしっかりしていて扱いやすく気に入ってました。ただ、もう少しナチュラルなアコースティック感が欲しいなと思い、塗装を剥がしたらどうなるんだろう?と思って試すことにしました。

ヒートガンやアイロンの熱で塗装剥がし

ギターやベースの塗装剥がしでググると、色々な方法がヒットします。ドライアーやアイロンの熱を使った方法がヒットして、試してみました。ヒートガンでしばらく塗装面に当てたところ、沸々と泡のようなものが。その後、ヘラなどを使って写真のように塗装を剥がすことができました。

しかし、これだけでもかなり大変な作業でして、残りのボディーの面積を考えるとやる気が起きません。 他にも、ノミのようなものでゴリゴリ、ベリベリと塗装を剥がす方法とか。実は私も、以前に所持していた6弦ベースをこの方法で剥がしたことがあります。若い勢いでやり切りましたが、結構大変だったのと木材自体にも傷つけてしまってヤスリがけが大変になります。音の面からも、元の木材はできるだけ削りたくないですよね。

そこで、一番メジャーな方法である剥離剤を使った塗装剥がしを試してみました。

剥離剤を使った塗装剥がし

こちらの剥離剤を使ってみました。かなり危険な薬品なので、使用上の注意をよく読んでから安全対策を行なって作業してください。

剥離剤

剥離剤1LがAmazonで2000円ほどで購入できます。

剥離剤を刷毛などで塗装面に塗りたくります。換気の良い屋外で行なって下さいね。そのまま30分ほど放置します。下の動画のようにぶつぶつと気泡が湧いてきます(タイムラプス撮影)。

剥離剤で塗装剥がしの様子 その1(タイムラプス)

その後、ヘラを使うとサクサクっと塗装を剥がすことができます。塗装が完全に剥がれるまで、この作業をひたすら繰り返します。

剥離剤で塗装剥がしの様子 その2

上の動画ではニトリル手袋をして作業してますが、剥離剤が付着するとゴム手袋なんかも溶けてしまいますので注意が必要です。剥離剤が皮膚に付くとヒリヒリしますので、すぐに水で洗い流します。万が一目に入ったら危険極まりないので、ゴーグル着用して作業します。

表面も同様に作業します。もちろん配線系は必ずすべて外してから作業します。 塗装剥がし

ラップをしたらどうだろうかと思い試してみたり。それほど効果に違いはないような気がします。(ラップは溶けませんでした) 塗装剥がし

このようにだいぶ塗装が剥がれてきました。 塗装剥がし

ところでこう見ると、スタインバーガーってフライングVっぽい形ですね。 塗装剥がし

シーラー剥がし

青い塗装がほぼ剥がれ、ようやく終わりかと思ったら本当の木目はまだでした。よく見ると下地のシーラーが残ってます。下の写真でお分かりいただけますでしょうか?黄色がかったシーラー面から木の地肌が少しだけ見えてます。

シーラーと木材の地肌

実はここからが本番というか、一番大変な作業がシーラーの下地剥がしでした。ベースの木材にできるだけ傷をつけたくないので(ヤスリ掛けが大変になるから)、ここでも剥離剤を使いながらコツコツとシーラー剥がしを行いました。

シーラー剥がし

剥離剤を塗ってもシーラーは表面の塗装ほどキレイには剥がれませんが、下の写真のようにザラついてきたあたりで鋭めのヘラでガシガシ削って剥がしていきます。

シーラー剥がし

ちなみにヘラは、ペラペラせずしっかり厚みのある金属製で、先端が尖っているものつまり刃先のようになっているものがおすすめです。100均でも手に入ります。

シーラーを塗ることで木の目止めを行い、表面をなだらかにしてキレイな塗装ができるようになります。塗る時は比較的簡単なのですが、いざ剥がそうとすると表面の塗装より剥がすのが大変なんですね〜^^;

横の部分も頑固な塗装なので、このように集中的に剥離剤を塗って塗装剥がしします。

シーラー剥がし

ネックもガシガシとシラーをこそげ落とします。

シーラー剥がし

【閑話休題】ピックアップの周波数特性測定

塗装剥がし、正直に疲れました(笑)ここで一休み、閑話休題です。

ベースギターの内部配線を解体する機会など機会などめったにない事なので、せっかく取り外したピックアップの周波数特性測定を測定してみました。

STEINBERGER ピックアップネックピックアップ

ピックアップの周波数特性を測定するために使ったものは、ミリバルとオシレーターそして テストボックス です。10kΩの抵抗とピックアップを繋いでその電圧比から、20kHz〜100kHzの間でインピーダンスを求めました。

ミリバルとオシレーター テストボックス V1.0

STEINBERGERベースのピックアップはハムバッキングです。ハムバッキングという名の通り、ハムノイズ(電源の50/60Hzノイズ)を打ち消しつつ、信号ラインを2倍の出力にするという優れた構造を持ちます。フタを開けてみるとシングルコイルが2つ並んでいるだけですが、お互いのピックアップのSN極性やコイルの巻き方を工夫してノイズだけ打ち消すというものです。マイク信号などのバランス信号に似てますよね。

さて、STEINBERGERベースのネックピックアップの周波数特性を調べた結果です。ハムバッカーなので4芯線あります。ハムバッカーとしての周波数特性に加え、シングルピックアップ単体の測定もしてみました。結果は次のとおり。

STEINBERGER NECK PU インピーダンス測定

シングルピックアップ単体ではインピーダンス200kΩ以下ですが、ハムバッカーにすると2つのシングルコイルが直列接続になります。ですので、インピーダンスも2倍の400kΩ近くになりました。

STEINBERGERベースのトーンやボリュームに使われている可変抵抗は500kΩです。それピックアップと並列に繋がっているので、実際の出力インピーダンスはグラフよりもっと下がるはずです。かなり混み合った内容なのでもう少し丁寧に研究し、またの機会にご報告します。

塗装剥がし中間報告

剥離剤を使った塗装剥がしを開始してから4日経ちましたでしょうか。現在はこんな感じです。

塗装剥がし中間報告

シーラー部分はポツポツ残ってますが、これが限界と言いますが、飽きました(笑)剥離剤1缶(1L)では足らず、結局もう1缶購入して合計で1.5Lほど使ってしまいました。次はもう少し効率よく塗装剥がしできる気がします。シーラー部分は曲者なのでここからはヤスリで処理することにします。

ここまでで、塗装剥がしに使った道具をご紹介します。何かの参考になればと。

塗装剥がしに使った道具

ここからはヤスリで残りのシーラを削り取りつつ、表面を滑らかにし、再塗装をどうするかを考えていきます。 以上で「STEINBERGER BASSの改造 エピソード1〜塗装はがし」の巻は終わりです。

メッシュ研磨シート#400番でシーラーの除去

ここからは研磨と再塗装の作業になります。

ダイソーで販売されているメッシュ研磨シート#400番を使って、残っているシーラー部分を研磨します。また、同時にボディも軽く磨いてなだらかにします。

メッシュ研磨シート#400番でシーラーの除去 メッシュ研磨シート#400番でシーラーの除去

ミニルーターで回路内スペースを研磨

ピックアップの穴部分などの入り組んだ場所は、ミニルーターで研磨すると便利です。 ミニルーターで研磨 ミニルーターで研磨

呑みながらコツコツ研磨

メッシュ研磨シートでコツコツシーラーを取り除く作業ですが、これが結構大変でした。呑みながら、気長に作業しました。 呑みながらコツコツ研磨

このように光に照らすと、シーラーが残っているのがわかります。 残りのシーラー

ゴム手袋をすると手が痛くならないことに気づきました。バックの黒ずみは、前回の塗装剥がしでヒートガンを当てた部分です。焦げがついてしまい、この黒ずみは取れません。 ゴム手袋をして作業

ポジションマークの除去

さて、ポジションマークが凹んでいることに気づきました。剥離剤で溶けてしまったんですね。剥離剤を使う時は、指板にかからないような対策をした方が良さそうです。 ポジションマークが溶けた

いっそのこと、ポジションマークは除去することにしました。ここもルーターを使うと簡単に取り除けます。

ポジションマークの除去 ポジションマークの除去 ポジションマークの除去

穴の部分はエポキシかレジンで埋める予定です。

#1000番で仕上げ、研磨終了

シーラーを除去できたので、最後に#1000番の研磨シートで仕上げしました。#1000番くらいで磨くと、木がツルツルした手触りになって気持ちが良いです。 #1000番で仕上げ、研磨終了

ネックは木の密度が高い(メイプル?)だけあって、非常にキレイです。 #1000番で仕上げ、研磨終了 #1000番で仕上げ、研磨終了

お尻の部分、実はシーラーがまだ残ってますが、研磨作業に力尽きたのでこれでよしとします(笑) #1000番で仕上げ、研磨終了

パーツを配置して仕上げのイメージをしてみました。白い木と黒いパーツがなんともDIY感あってカッコイイですね♪ パーツの配置テスト

蜜蝋ワックスで再塗装

さて、無塗装のままでも良いかなと思ったのですが、木のためにも塗装をしておくことにしました。今回は初めて蜜蝋ワックスというものを使ってみます。

蜜蝋ワックス

成分を見ますと、国産蜜蝋の他、亜麻仁油と杉精油が含まれてます。ハンドクリームなどにも使えそうな感じで、カラダにも良さそうです。 蜜蝋ワックス

一度手で塗り込んでから、余分なワックスをウエスで拭き取りました。木材に艶が出て、濃淡がハッキリする感じです。 蜜蝋ワックスで再塗装 蜜蝋ワックスで再塗装

ネックは非常にキレイに仕上がりますね。 蜜蝋ワックスで再塗装

下地の木材の表面の色にそのまま濃淡が付きますので、くすんだ部分は少し汚く見えてしまいます。 蜜蝋ワックスで再塗装

指板にも塗り込んでおきます。 蜜蝋ワックスで再塗装

その後、1日ほど乾かします。

【閑話休題】STEINBERGERのブリッジ

ここで一休み、閑話休題です。STEINBERGERのブリッジについて少し触れてみます。

STEINBERGERのブリッジは、まぁ使いずらくて、、構造上仕方ないんでしょうけど、ペグが回しづらいです。 STEINBERGERのブリッジ

一度分解してみます。 STEINBERGERのブリッジ 実は裏にネジがついていて、ここも取り外せるんですね。 STEINBERGERのブリッジ こんな感じの構造になってます。バネの部分はユーザービリティでしかなく、弦を張った状態だとなんの役割もしません。むしろバネは無い方が、共振の悪影響を減らせるので取り外してしまいました。 STEINBERGERのブリッジ

またこのペグのネジ部分は、回しているうちに緩んでしまって煩わしかったのでねじロックで固定しておきました。 ペグのネジ ねじロックで固定

パーツをセットして仮完成

はやく音出しをして音色を聴いてみたかったので、パーツをセットして仮完成させました。 はんだ付けが汚いですが、仮配線なので良しとします。ピックアップはハムバッカーですが、ブリッジとネックのピックアップをそれぞれシングルで使ってシリーズ接続した配線で試してみました。ジャズベースなんかでよくやられるシリーズ接続と同じです。 配線作業

トーンコントロールも除去、ワンノブです。500kBカーブの可変抵抗が使われてますが、ボリュームを絞ることでそれほど音量を下げずにトーンもコントロールできます。 配線作業

パーツをセットして仮完成です! パーツをセットして完成

気になる音ですが、素朴というか地味な音ですね(笑)STEINBERGERの自体が木鳴りを排除する思想というか構造になってるので、そもそも塗装を剥がして木鳴りを狙うのは間違いでした。また、塗装を剥がしたことによって、トラスロッド?(多分)から共振音がするようになりました。共振音はピックアップでは拾って無いのでほっといても大丈夫そうですが、気になりますね。

あと、ハムバッカーのシリーズ接続は悪く無いんですが、少し硬い音すぎるかなと思ったので、後にネックピックアップ1つに落ち着きました。

もう少し微調整することで、これはこれで面白いベースになりそうです。モータウンサウンドのベースの音色に近づけると良い感じ。ジェームスジェマーソンのように、スポンジ入れたり、ロッコプレスティアのようなミュート奏法したりすると楽しいです♪